「残念!なぜアーサー?」キング・アーサー Kentaさんの映画レビュー(感想・評価)
残念!なぜアーサー?
個人的には、残念の一言に尽きます。
このお話のあらすじを手短にいえば「国王である父を叔父に殺され城を追われた主人公が、運命に導かれて聖剣の力を手に入れて復讐を果たす」でしょう?
たとえばスパイダーマンでおじさんを殺されて、「大いなる力には大いなる責任が」とかいうおじさんの最後の言葉を胸に力を正義のために使って復讐を果たすとか、ハリーポッターで両親を殺されたハリーが運命の対決で親の仇のヴォルデモートをやっつけるとか、イギリスやアメリカで好まれそうな、復讐と運命と正義(ある一定の立場からの正義)を前面に押し出した、欧米風のストーリーにアーサーという名前や伝説の剣を無理やり押し込んだ内容で、題材がアーサー王である必要がありません。
昔の(2004年の)キングアーサー(文庫で読んだきり映画館へ行っていないけど)は、青坊主なる異民族の脅威やローマ皇帝から貢物を要求する使者がありました。
ローマ皇帝カエサルがガリア戦記の中に生命不滅の信仰で死んでも生まれ変われると信じて死を恐れず勇敢に戦うどう猛で不気味なガリア人(ケルト民族)を書き残していますから、アーサー王の時代に青坊主のような奇妙な異民族がいたかもしれないし、アーサー王の元へローマ皇帝の使者が訪ねているし、イギリスはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国であってローマ皇帝さえ恐れて手を出しかねた好戦的なケルト民族がほとんど外敵の脅威にも晒されずに数百年前まで閉じこもっていたアイルランド島はイギリスの一部です。
昔のキングアーサーは、本で読んだ程度で専門知識を持たない僕が「たしかにアーサー王ぽいぞ」と思う程度に歴史や文化を織り込んでいましたが、今回はなんか違うでしょう。
ちくま書房から日本語版が出ている『アーサー王の死』という西暦1400年代にイギリス最古の出版業者キャクストンが出したお話がアーサー王の伝記としてはきっと一番詳細なのでしょうから、それとは似ても似つかない今回の映画は、あくまで歴史上の人気の英雄と同じ名前を冠した、全くオリジナルの映画なのでしょう。
アーサー王を名乗らなければ星をもう1つつけるところですが、キングアーサーというタイトルが良くなかったと思います。
タイトルを見て期待して映画館へ足を運んだだけに、残念な気持ちでいっぱいです。