「眉毛」世界一キライなあなたに U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
眉毛
このヒロインの眉毛は、とてもよく動く。
加えて落ち着いた街並みに反比例するような色使いのファッション。
出だしの感想は「センス悪い」だった。
が、しかし。
彼の時間を彼と共有できたように思う。
観客である僕は拒絶からこの作品とヒロインに出会った。
彼が彼女を拒絶したように、僕もこの作品に拒絶を覚えた。
よく動く眉毛が目障りで、芝居が大袈裟に思えた。色使いが派手な奇抜なファッション、それらがもたらす印象が故に。
だが、彼が彼女に心を開いてゆくのと同じ速度で、僕もこの作品に没入していく。
相変わらず眉毛はよく動くし、ファッションが落ち着く事もないが、彼の心情の変化が手に取るように分かるからだ。
第三者的な立場ではなく、彼自身に感情移入するわけでもなく、彼が彼女に向ける目線と同様のものを、僕は作品に向けていく。
この作品は安楽死を扱ったものであり、おそらく是非は問われ続けその結論が出る事はないだろう。
その安楽死を一つのハッピーエンドとする為には、この「彼の目線」というのは重要なファクターで、本人の意思に寄り添わねばこの作品自体の存在が無意味になる。
その為の設計図は実に緻密であり、心理学でも流用したのかと思うほど、既存の脚本とは一線を画したような成り立ちを感じる。
この脚本家が天才なのか、はたまたコレを組み上げた監督が天才なのか…。
類まれなる魔法がかけられてた。
彼女が僕にとって魅力的に変化していく事はなかったが、この作品に覚えた拒絶感は綺麗サッパリ消失してた。
むしろその振り幅が「安楽死」という結末に選択肢という結論を付与してたようにも思う。
余談だが、眉毛の動かない彼女はとてもとても愛らしく美しい。