「あなたに出会うまでの私」世界一キライなあなたに ちよこ、れいと。さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたに出会うまでの私
よくある恋愛映画と思いきや、すごく考えさせられる映画でした。
青年実業家として仕事に趣味に恋に充実した日々を過ごしていたウィルは、
バイクとの接触事故という理不尽な理由から、それまでの生活を手放すことを余儀なくされてしまいます。
彼の心の中は楽しかった昔の思い出で満たされていて、そのことがより現実の自分を惨めな気持ちにさせていました。
絶望感から彼は家族や友人に冷たい態度をとり自暴自棄になってしまいますが、
時を同じくして、家族のためお金のためにカフェで働いていたルーが失業し
やっとみつけた介護の仕事(しかも高給)をするためにウィルと出会います。
最初は、ルーにも冷たくあたっていたウィルですが彼女の明るさや素直さを見て次第に2人の間には友情がめばえてきます。
次第に明るさを取り戻しつつあるウィルに家族も安心してルーに仕事を任せ、もしかしたらウィルが生きることに前向きになってくれるかもしれないという期待もしていました。
これがアメリカ映画ならば、ラストは恋人になった二人がキスをしてfin.でしょうけども、そこはイギリス映画。
そう簡単にはいきません。
ウィルに生きて欲しい両親やルー。
ルーに惹かれる気持ちがありながらも、医者から治らないと言われてしまったどうにもならない現実に揺れるウィル。
「安楽死」「尊厳死」は最近議論を呼んでいるテーマですが、
これについて「生きていればいいことがある」なんて言葉は当事者にとって残酷な言葉でしかないのだという事実をつきつけられます。
本人の心の痛み、希望、絶望感は誰にも分からないのです。
こんな重いテーマですが、ルーのころころ変わる表情(困った顔が最高に可愛かった)やファッション、音楽、そしてわずかだけども大きな希望をもったラストに、号泣しながらも救われました。
蛇足ですがラスト、
ウィルはずっと行きたかったけど、楽しかった記憶を更新するのが嫌で行かなかったフランスへルーと旅立ったのだと
私はそう感じました。
邦題はなんとかして欲しいけど
DVD出たら買います。