劇場公開日 2017年6月24日

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「円熟味滲むクライム・コメディ」ジーサンズ はじめての強盗 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0円熟味滲むクライム・コメディ

2017年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

楽しい

「はじめてのおつかい」ならぬ「はじめての強盗」に挑む3人のじジーサンたちの物語は、老人特有の自虐ネタで笑わせながら、人生の終盤における現代の社会問題を織り交ぜ、家族や仲間との絆を温かく描いていく。
ニューヨークのブルックリンを舞台に、ウィリー、ジョー、アルは40年以上勤めてきた会社の゛手の平返し”と、それに追討ちをかけるような銀行の対応で進退窮まってしまう。
そこで彼らは人生一発逆転を懸けて「強盗」することを決意するのだが、老骨に鞭打ち、リスキーで重罪に問われるような犯罪に何故手を染めるのか?
それは手厚い福祉政策を掲げながら、税収減になると真っ先に社会的弱者である子供や老人を切り捨ててしまうことにある。
本作は、1979年のマーティン・プレストン監督の「お達者コメディ/シルバー・ギャング」のリメイクなのだが、現代的視点でスタイリッシュに映画を仕上げている。
そして何と言っても、ウィリー、ジョー、アルを演じるレジェンドなオスカー俳優たち、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンの80歳オーバーとは思えない、溌剌としてユーモアたっぷりの成りきりぶりが楽しい!
更に、その演技には人生の酸いも甘いも嚙み分けたような滋味のようなものがある。
この滋味が本作で描かれる家族愛や仲間との友情のドラマに何とも言えない温もりを与えている。
80歳過ぎの名優たちが繰り広げるヤンチャな痛快コメディを観ていると、まだまだ若輩な我々はもっと頑張らねばと思えてきます。

玉川上水の亀