「名匠×名優=傑作、ですね」ハドソン川の奇跡 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
名匠×名優=傑作、ですね
名匠クリント・イーストウッドが監督で名優トム・ハンクスが主演と言う事実だけでも見る前から誰もが良作であろうと確信する中で、その期待にしっかり応えてしまう辺りはさすが名匠&名優と言わざるを得ませんでしたね。
しかも誰もが結末を知っている事故を、そして奇跡が起きると誰もが知っている奇跡を描いて感動させるほど難しい題材はないのに、それを描いてしっかりと結果を出してしまうところに改めて名匠の凄さを垣間見た気がしました。
また今回も賞レースを賑わすのでしょうね、でもまあこれなら仕方ないでしょ。
それにしても上映時間が96分とイーストウッドらしくない潔い上映時間には、最初目を疑ってしまいましたよ。
でも、わずか208秒の出来事を描いたと知って、なるほど納得。
むしろ普通に考えれば96分でも長いぐらいか、しかしまったくダレることなく、事故前、事故中、事故後の時系列を巧みに操りながら見る者を引き込むんでしまう構成力には、いやはや脱帽です。
そもそもシンプルな話なので、時系列が変わってもそれほど混乱することはなかったですし、その時々によってまた違った印象に映る演出には本当に唸らされました。
全てに無駄がなくコンパクトにまとめ上げ、仰々しさのない後味のいい感動を運んでくれる辺りは、さすがとしか言いようがありません。
しかし私はこの映画で初めて知ったのですが、英雄と呼ばれたサリー機長が、事故調査委員会にこんな厳しい追及を受けていたとは驚きました。
勿論、あらゆる観点で事故を調査し再発防止に努めることは必要だと思うので、委員会の方々は単に仕事をしただけだけの話なんでしょうが、本当にイライラしたなぁ。
まあおかげで映画的には緊張感たっぷりで、とても興味深く見れましたけどね、委員会の方々は悪役扱いでちょっとお気の毒・・・。
でも、これはいかにもイーストウッド監督らしい切り口ではありましたよね。
まさしくデータ至上主義の現代社会に警鐘を鳴らす演出だったとでも言いましょうか。
やはり最後は人の力、それを体現したサリー機長&ジェフ副機長には賞賛の拍手を送りたいですし、演じたトム・ハンクス&アーロン・エッカートもお見事の一言でした。
機長を信頼するジェフがとても良かったなぁ、最後のジョークも最高でした。
それと突然注目されることになった人間の、英雄の、苦悩・葛藤も物凄く伝わってくるものがありました、これもイーストウッドらしい切り口でしたね。
エンドロールの余韻もたまらなく良かったぁ。