孤独のススメのレビュー・感想・評価
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解き放たれる、ということ。
変わらない毎日をひとり淡々と生きる主人公のもとへ、ある日、言葉も喋らず謎めいた男がやって来て居ついてしまうことから物語は始まる。見知らぬ男との同居生活は、良くも悪くも今までの単調な生活にアクセントをつけ、主人公の過去が俄かに色づき始める。
訳あって閉ざされた、或いは自ら閉ざした世界が「異質なもの」によって解放に向かうという話自体は今までにもあったが、この映画の登場人物の設定には興味が湧く工夫があり、淡々と、それでいてグッと引き込んでゆく脚本と演出が良かった。
オランダ映画であり、まったく初めて観るキャストと製作陣。そういった部分でも、個人的にはかなり鮮度があった。邦題を含め、日本語の配給コミニュケーションには騙された感もあるが、それはそれでまた「意外性」だったかもしれない。
This is my life
人は、いつも何かを演じているそうです。家にいると、誰かの親であり、誰かの子であり。職場にいると、どこかの会社の、どこかのスタッフであり…。でも、それらすべてを取り払ったら、何が残るのでしょう。本当の自分?、あるいは、正真正銘の虚無?。答えの無い問いかけを、繰り返したところで、ふっと訪れる、居場所の無い感覚が、消えることはないですけど。
ま、個人的な話は、置いといて、愛する家族のこと。訳ありの隣人のこと。なんにも演じない人のこと。自分の決断と、その代償。すべてThis is my life です。それを気付かせてくれるのは、誰なのか?。
なんだか、まとまりのない映画と思ったんですが、綺麗に着地しましたね。かなりの高得点が、期待できます。ただ、あの邦題は減点材料かも。離れていても、お父さんの心は、みんなと同じ空の下、繋がっているのだから。
珍しく邦題が秀逸。
人には勧め辛いが好作、という一本。
「失うのが嫌ならば、何も持たなければ良い。裏切られるのが怖ければ、誰も信じなければ良い」
そんな自分が辿り着いた人生の真理を、噛んで含めるような物語。
ただ、それを貫くには人間という生き物はあまりに弱過ぎるから、宗教に頼ったり、愛という幻想にすがったりするわけであったり。
だからこそこの映画が産まれるわけで…
宗教的描写は多いが、本題はそこにあらず。
誰もが抱える「永遠に満たされない心の隙間」を淡々とあぶりだしているのが心に染みた。
失ったようで実は持っている主人公、宗教的価値観で守られてはいるが実は空っぽの隣人。
そして全てから解放される代わりにずべてを失い、すべてを得るストレンジャー。
キリスト教がモチーフだが、これはもう「色即是空、空即是色」の哲学世界である。
疲れた心と、その隙間を埋めるものは何なのかを考えさせられる作品。
めずらしいオランダ映画
負けた気分
いやいや、だからと言って、ススメてはいないんじゃない?
妻に先立たれ、息子を追い出した、初老で一人暮らしののフレッド。
知的障害(のちに事故による後遺症とわかるが)の男と、奇妙な共同生活を始めたが、はじめは、近隣住民や教会に対して善人の顔を見せたいアピールなのか、と思ってみていた。
そのわりには、その薄汚れた男・テオを追い出すわけでもなく、彼のしたいがままに任せている。
中盤まで、フレッドの意図がまったく見えない。
しかし、次第に奇妙な友情や信頼も生まれ、単調だったフレッドの生活に変化が現れだす。
家の壁に書かれた落書きは、フレッドとテオを、傲慢で肉欲におぼれ、ついに神によって罰せられた「ソドムとゴモラ」に擬して中傷していた。
「善きサマリア人」を引き合いに出す場面は、善行を称えているというよりは、君(フレッド)は嫌われてると暗に揶揄したようにも取れた。など、各所各所でその場面にあったキリスト教の教えの示唆がある。
今まで、異端者を憎悪し毛嫌いしてきたのであろうフレッドが、いざ自分が周りからそうゆう目で見られだしたことで、心の基準が変わりだす。監督のいう「解放」という言葉がぴったりの心境になっていくのだ。
なによりもその証拠に、息子ヨハンの歌う「this is my life」がブレッドの心に届く。その姿が僕の胸にも突き刺さってきた。
それらを踏まえたうえで、受け容れること、赦すこと、認めること、そんな宗教観が物語の底辺に根深くしみ込んでいるを感じた。
ラストのマッターホルンは、まさに孤高の頂き。それでいて、気高ささえ感じた。一人でもいいじゃないか、とマッターホルンを自らにかぶせているようだった。やはり、タイトルは原題(マッターホルン)のままにしてほしいわ。
コドク
シンクロ。
浅すぎる
緩やかな描写から一気に加速してカタルシスへ
雰囲気はアキ・カウリスマキ監督などの北欧映画に似た味わいがありますが・・・
オランダの田舎町で独りで暮らす中年男性フレッド(トン・カス)。
町は教会を中心にした小さな集落で、誰もが皆、顔見知り。
ある日、フレッドの向かいの家に、奇妙な男テオ(ルネ・ファント・ホフ)が現れて、ガソリンがほしいといっている。
その奇妙な男は、昨日フレッドの許を訪れ、同じようにガソリンがほしいといった。
ガソリンのないフレッドはわずかばかりの金を渡して、彼を追い払ったのだが、どうも嘘だったらしい。
嘘というよりも、テオは口もほとんど利かず、どこかヘンなので、実際のところはわからない。
テオに、昨日の金の代わりに、玄関前の敷石の掃除をさせたフレッドは、労をねぎらうために彼を室内に招き入れた・・・
というところから、フレッドとテオの奇妙な同居が始まる・・・といったハナシ。
中年男ふたりの奇妙な同居生活をシュールな笑いで描いただけの映画かと思っていると、後半、物語は一気に加速し、爆発的なカタルシスが訪れる。
加速する物語は、唐突起こるのではなく、前半に丹念に布石が打たれていて、翻ってみると、実によく出来ている。
フレッドの独り暮らし・・・
若い頃の妻と幼い息子の写真が飾られている。
妻が事故死したことは早々にわかるのだけれど、その事故で息子も亡くなったかどうかは語られない。
テオの奇妙な行動の原因・・・
先天的なものものかしら、と思っていると、さにあらず。
フレッドの過去と心情的に同化してくるところがある。
フレッドが暮らす小さな集落・・・
集落の皆が教会に通い、日曜日の礼拝では皆、座る場所が決まっているほど。
フレッドの家の向かいに住む中年男は、教会の役員かなにか。
しかし、その彼も心に何かを抱えており、それがまたフレッドの過去に関係がある。
フレッドとテオが同居し始めてすぐに、彼らふたりに同性愛の噂が立つ・・・
ただ単ににテオが、フレッドの亡き妻の洋服を着ているからだけではない。
と、これらの要素が、後半、ストンと腑に落ちて、感動を呼び起こします。
(ただし、どのように展開するのかは書きません)
そして、重要なのは、映画の奥底に流れる宗教観。
受容と赦し。
これが大きなテーマでしょう。
受け容れることなく、赦すことなく、生きてきた男が、あることがらを受け容れる。
それが、赦し(ひと皆、神の前で平等であることで得られる赦し)になるというものです。
クライマックスで歌われる「This Is My Life」、鳥肌ものでした。
最初から最後まで乗れなかった
この邦題からは絶対に想像出来ない秀作に癒される!
「一体これは何?」、この映画は、観客を何処へ誘おうとしているのだろうか?
本作はオランダ作品なので、多分物語の舞台もオランダの片田舎の町なのだろうか?それはそれは、緑が目に眩しい程の美しい草原から物語は始まる。
そして全編通してクラシック音楽の美しい響きが心地良く流れる。
物語は、初老の男ヤモメである、主人公フレッドが或る日、奇妙な出来事に遭遇する事で彼の人生が大きな変化を起こして行く。そして彼の暮らす、その小さな村の多くの人々を巻き込む事件へと発展していくのだが、完全に先が読めない!
そして、ラストがまさか???の驚きの終焉を迎えるのだ!
しかし、全編どう進むのか、何を語ろうとしているのかが、途中全く見えないままに物語は進行するのだが決して退屈する事も無ければ、飽きる事も無い摩訶不思議な映画なのだった!!
「シザーハンス」「アメリ」のような特別な異次元空間のような映画!
貴方はきっとこの映画で癒され、そして勇気を貰うに違いない!
この作品のキーポイントの一つがスイスのマッターホルンの山だ。
まさに本作もあの美しい名峰のような奥深さを秘めたミステリアスな秀作だった!
是非このラストを観て欲しい!
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