鬼はさまようのレビュー・感想・評価
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韓国は刑事とサイコパスの組み合わせが得意だな
死刑判決された一人の殺人鬼を巡る話。
主人公:刑事(殺された女性の兄)
義弟:殺された女性の夫
両方主人公とも言える。
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妻を殺されたひ弱な夫は感情的になって逮捕された犯人を殺そうとするが、刑事に阻まれてしまう。それからは妻を埋めた場所を犯人に聞き出すためだけにいろいろ画策する。
主人公も同じように半ば狂いかけていたが、犯人が遺体を埋めた場所を一向に言わないのでなんやかんや風化しかけていた頃、なぜか義弟が暴力団絡みの事件に関与していることが発覚。事件の糸を手繰り寄せていくと最初の殺人鬼の話に結び付く。
義弟は殺人鬼を刑務所から山に連れ出し「埋めた場所を教えろ」と執拗に聞くが、
教えてもらったと同時に返り討ちで殺される。
主人公もいよいよキレてしまい、すでにボロボロの殺人鬼をさらにボコボコにして殺そうとするが、機動隊やら同僚やらに止められる。
ラスト。主人公が心の声で同僚に語りかける「俺は生きたい」という言葉。
※これは犯人を生かす選択をしたら義弟と同じような末路になる意味と思われる。
隣で同僚がもの言わず立っていて、わざと無防備にしたであろう拳銃を主人公が奪い、殺人鬼の頭を撃ち抜いて射殺した。
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語彙力が無いため本作の殺人鬼のような人格をサイコパスと一括りにする。
ここまでくると犯人の動機や生い立ちなどはどうでもよくて、「ただ殺さなければならない」という感情に掻き立てられるのだと感じる。実際多くの作品でサイコパスの生い立ちや動機を詳細に描いたものは少なく、描いたところで仕方ないような気もしている。現実なら興味本位で知りたいところだが。
本作でも、冒頭で返り血だらけの服を雨で洗うときに満面の笑みになったり、なんとなく女が嫌いなんだなということが分かる程度の描写しかない。例えば「空がとても青いから」という理由で人を殺したりするのがサイコパスである。もちろん動機自体はあるのだろうが、そこは昆虫のような訳の分からないセイブツと捉えた方が潔い。
誰が報われる…
結末も救いがない、セブンのようだ。犯人捕まってからが長く、刑務所内で交換殺人という斬新な復讐方法を実施するが、結局は返り討ちにあってしまう。最愛の妹、妻を殺され、行方もわからないという、何とも苦しい、憎き犯人はそこにいるのに何もできないというジレンマがこの映画の肝。パク・ソンウンは犯人役をふてぶてしく怪演。兄貴と義弟はそれぞれ似ている芸人に思えてしまった。
悲劇と復讐の彷徨
バイオレンス、狂気と陰鬱なストーリー…。
これぞ韓国サスペンス!…な一本。
刑事テスが偶然逮捕した当て逃げ犯は、巷を震え上がらせている連続殺人犯だった。
その被害者の中に、テスの妹が含まれている事を知り…。
殺人犯ガンチョンに戦慄。
もはや人の感情の欠片も無いのだろうか。
犯行も主人公たちの奔走も自分の行く末までも、不敵にほくそ笑む。
「妹の居場所を教えてくれ!」と土下座する(!)テスに、「自分で捜せ」と鬼畜の所業!
あるシーンで襲撃に遭うが、刺されても刺されても倒れない強靭さ(と場所が場所なだけに素っ裸)はターミネーター!
そして、遂に○されるラスト、自分の最期すら不敵に笑う。
途中までみやぞんにしか見えなかったが、鬼か悪魔か怪物か。
パク・ソンウンが恐演。
この殺人鬼が序盤で逮捕されてしまうので、追う刑事vs逃げ続ける殺人鬼の展開ではない。
悲劇によって人生を狂わされた二人の男のドラマがメイン。
即ち、テスとその義弟スンヒョン。
テスは必死に妹の遺体を捜すが、スンヒョンは…。
ちと冴えない風貌だが、画に描いたような“いい人”のスンヒョン。きっと妻の尻に敷かれながらも、それが幸せだったであろう。
それを全て奪われた。
残されたのは、悲しみ、怒りと憎しみ。
復讐を誓うスンヒョンは、一線を越えてしまう…。
義兄とも対峙。
テスも辛く、苦しい。義弟を救いたいのに、救えない。
元凶である殺人鬼は、その顛末を見て、ほくそ笑む。
結末も後味悪い。
ああなるしか無かったのだろうか。
誰も救われない。浮かばれない。
だからより一層、映画のラストシーン、幸せだった頃の主人公と妹夫婦の姿に…。
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