「戦場の実態…決して目を背けてはならない…」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
戦場の実態…決して目を背けてはならない…
レンタルDVDで鑑賞(吹替)。
近年急速に科学技術が発達して、戦場から遠く離れた場所からでも戦争を遂行出来るようになりました。遠隔操作されたドローンでの攻撃が、今や主流になりつつあります。もはやゲーム感覚で戦争しているみたいに感じる今日この頃です。
テクノロジーの進歩に戦争が起因していることは紛れも無い事実ですが、戦争という現象自体は良い方向に進歩することもなく、より残酷でやるせないものになっている気がします。
テロを未然に防ぎ、多くの命を守るのか、それとも今そこにある小さな命を優先するのか?―命は尊い。数の違いでその天秤が動くことなど決してあってはならないことですが…
ヘレン・ミレン演じる攻撃司令官とアラン・リックマン演じる上官との切迫したやり取りの中、ブリーフィングルームで繰り広げられる結論の出ない議論に、この問題が内包しているものが表現されているように思いました。
テロリストは死亡し、自爆テロを防ぐことは出来ましたが、少女は爆発に巻き込まれてその幼い命を落としました。少女はただ、日々の暮らしの糧を得るためにパンを売っていました。それは彼女にとってありふれた日常に過ぎませんでした。
その運命は遠く離れた場所にあるボタンに握られ、そして蹂躙されてしまいました。これが現代の戦争の実態なのかと、やるせない現実をストレートに突きつけられた気がしました。
現在進行中の出来事の中にも多くの犠牲があり、今こうしている間にも、多くの命が天秤に掛けられているのかと思うと、やるせなさに胸が苦しくなって来ました。あまりにも不安定な平和が続いている状況の今、考えるべきことは何か、正義とはなんなのかを観る者に投げ掛けて来る作品でした。
※修正(2021/10/20)