「なんでそこで売るの。」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
なんでそこで売るの。
冒頭でフラフープに興じる少女の命が焦点になることは明確だが、
そもそもこの少女があそこにいなければ即座に攻撃したのは明白。
周囲にまったく民間人がいなかったとは思えないし言い切れない。
あるいはこれが幼気な少女でなかったなら?(すいません)なんて
色々憶測してしまったところだが、やたら問われる1:80の比率。
命の重さを問うなら一兵卒を帰すため何人も兵士が犠牲となった
あの名作の作戦は正当だったのか?などいちいち問いたくもなる。
ヘレン演じる大佐は一刻も待たずに攻撃を要請、会議に挟まれる
中将は意見に阻まれ指示を出せない、ドローンパイロットは悩み、
工作員は何とかパンを買い占めようとする。其々が各々の役割を
果たすことにのみ集中する過程で、どうしようにもできない現実
が目の前に広がっているのだ。こんなに早くパンが売り切れて欲
しいと思ったことなど一度もない。そこから早く立ち去ってくれ。
今そこにある命か、今後予測される多数の命か。そんなこと人間
が即答できるものではないので、決断を迫られる人間達は結論を
先延ばしにしようとする。パイロットが指示に従い攻撃後に祈る
姿勢はもちろん、誰もが罪のない民間人を殺したいとは思わない。
こんな詭弁は安全な劇場で鑑賞した自分が言うに過ぎないけれど。
これが遺作となったA・リックマン。今作の彼ほど惜しい俳優だ
と感じさせてくれた役はない。最後の台詞の重みがズッシリと肩
にのしかかり、現場を見もせずにものを云う愚かさが身に染みる。
(神の目。が存在するなら民間人だけを避けられないのだろうか)