「命題」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
命題
クリックして本文を読む
秀逸なオープニングだった。
音楽ともシンクロし、状況が瞬時に把握できる。
そして、壮絶なライブ感であった。
いや、現場を見る事などはないのだけれど、あんなにクリアな映像を目の当たりにするのかと、人類の叡智に驚いた。
冒頭語られる一文が心に刻まれる。
「戦争で一番最初の犠牲は真実である」
仕掛ける側は、自身の正当性を証明しなくてはならず、それを獲得するに至るまでの仔細が語られる。
思うのは、責任を回避したい人のズルさであり、そのズルさを曖昧にできる狡猾なシステムでもある。
でも、誰もそんなものの責任などを背負えるはずはなく、また、その記憶がなくなる事はない。
重たい緊迫感と沈黙が画面を支配する。
どっちの言い分も分かる。
80人分の人生と1人分の人生を秤にかける。
でも…結局は同じなのではないのかと思う。
1人の死は1人では収まらない。
それに関係する人々を巻き込む。
亡くなった娘の父親が、テロリストに変貌し、旅客機をニューヨークに突っ込ませないとは誰にも言い切れないのである。
命の重さというよりは、今後想定出来る被害の有様を秤にかけていた。
現状ある問題に対し、言い訳と言い逃れを模索しているに過ぎない。
だが…
当事者はそんなに簡潔にはいかない。
凄い残酷なシステムにも思えた。
五分ではないし、自分の成果を確認し報告するまでが仕事のようだ。
世界が歪んで行く経緯を傍観する…そんな事を考えうすら寒い印象を覚えた。
「12時間後にまた戻ってこい」
なんて無慈悲な命令なのだろう。
歩いていく背中が、今にも崩れそうだった。
コメントする