「自然な演出と少女の歌声」ブランカとギター弾き よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
自然な演出と少女の歌声
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意地の悪い見方をすれば、この映画は数々の矛盾を指摘することが可能である。
主人公の少女が生活の糧を得るために盗みを働く。さらに、盗みに協力した他の子供たちにはほんの少ししか分け前を与えない。幼いながらも相当のワルである主人公の姿が、それでも映画では肯定的に描かれる。
孤児院を出てギター弾きのもとへと戻る彼女の未来に明るいものが見えるだろうか?盲目の年老いたホームレスに少女を守る力などあるはずもない。
このように、映画は観客に様々な論理的破綻を無防備に晒している。
だから、この映画は駄作になるのだろうか。いや、そうではあるまい。
あらゆる人間の生が矛盾に満ちているように、映画という虚構もまた矛盾に満ちている。
フィリピンという国の福祉の現実を批判しつつ、発展途上国の人々に対する収奪によって成り立っている安い海外製品を消費することも矛盾である。
そのような欺瞞は誰しも陥る可能性がある中、一つずつそれらのことに気づきながら、向かい合いことが人生の側面だ。
ギター弾きのピーターがどこでどうやって生きてきたのか。大きな謎には違いない。誰かのレビューにあるように、これは神様なのだと思う他はない。
貧者が神に救われるという話は、昔から童話などの寓話に、繰り返し描かれてきた。この映画もまた、そのような類型の一端に連なる。
自然なカットの繋ぎ、自然な構図。少女の憂いを帯びた歌声が心に残る。
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