「待つ人の元へ」ブランカとギター弾き KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
待つ人の元へ
痛々しいスラムの実態の中、逞しく瑞々しく生きるブランカと彼女に寄り添う神様みたいなピーター、まっすぐな好意を向けるセバスチャンが際立っていた。
盗みも裏切りも身売りも当たり前の街で、一筋の愛情を求める子供とゴミはゴミらしくと諦める子供がいて、どうしても胸が痛くなった。
「母親を買う」という価値観しか持てない彼女達の、他の親子をじっと見つめる目線や人混みの中ギラギラした目付きがすごく特徴的。
自作の部屋のハート型の窓から外を覗くブランカが可愛らしい。
後にラウルに閉じ込められた鶏小屋にも小さいハート型の穴があって、状況も心境も全然違うけれど繋がりを発見できた気がする。
セバスチャンが必死でピーターを探して閉じ込められたブランカを助けるシーンがとても良かった。
飛ぶ鶏、人情派オネエ、もう盗みは嫌だと盾向かうセバスチャン、ピーターに縋り付くブランカ、怒るラウル
スリリングだけど全ての瞬間が美しかった。
母親を諦め孤児院に入るも、やっぱり大好きな人と一緒にいたいと夜中に抜け出すブランカに涙が止まらなかった。
「家に帰る」とギターの音を辿り広場のベンチに向かって、セバスチャンがタバコを売ってて、見えないはずのピーターがこっちを見て、ブランカと泣きながら笑い合って、その最後の表情は本当に最高だった。
大きな部屋がなくても、血が繋がってなくても、待っている人のいる場所こそが家なんだとブランカと共に学べた。
これから三人で仲良くやっていけるんだろうなと想像巡らせることができる。
ただ、映画はいい終わり方だったけど生きるために手段も選べないような子供が大勢いることは確かで、どうにか救われることがあればと思ってしまう。
その救いっていうのがまた厄介なんだけどね…ジレンマがすごいわ…
本編終了後の文章には驚いたし悲しくなったけど、この映画がずっと残り世界中を周り後々に残っていることで彼に感謝の気持ちを伝えられればと思う。