「“国家の危機”は思想弾圧のいい口実」トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 REXさんの映画レビュー(感想・評価)
“国家の危機”は思想弾圧のいい口実
「国家の危機」は、思想の強要、言論弾圧にもってこいの理由付けであり、容易に新たな独裁国家になりうる。
共産主義を誹謗しながら、その実米国自信も共産主義と何ら変わらない。
ハリウッド・テンと赤狩りは有名な話だが、この映画でトランポをとりまく状況は、私が想像していたのを通り越し、もっと酷かった。集団リンチに近い。
トランポたちの活動にはあまり触れられていないが、トランポたちは一体なにをしたのだろうか。幕末の倒幕派と佐幕派との違いのように、よりよい国のあり方のプロセスが違うだけでは。スノーデンのように軍事機密にアクセスできる者が情報漏洩したのとは訳が違う。
例えばトランポが脚本に共産主義を練り込み、それに観客が感化されようと、それ自体ははっきりいって個人の自由なのである。
国が不安の種を植え付ければ、集団ヒステリーは容易に起こりえる。
アジアンヘイト、ノーマスク狩り、ワクチンパスによる実質的な人種差別、今回のコロナ騒ぎにも状況が重なる。
誰が感染し、誰がウイルスを持ち込み、誰がマスクをつけていなかった。本来はマスクをつけようとつけなかろうと発症しなければ健康体とみなされるであろうはずなのに、誰もが無症状感染者とされ、疑心暗鬼になり「互いを傷つけただけ」だった。
思想とウイルスは違うと人は言うかもしれない。
でも、思想がウイルスのように知らぬ間に浸食すると考え、国民の自由を侵害できるできる法律を制定しようとした部分では同じこと。
ハリウッド・テンは、政府が恣意的に恐怖をコントロールし、都合の良い政策を危うさのいい手段の例だと思った。
そしてこの映画は名台詞の宝庫。脚本家トランボの映画に値する脚本だった。