劇場公開日 2016年7月22日

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「エンタテインメント色たっぷりの社会派映画」トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンタテインメント色たっぷりの社会派映画

2016年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

米ソ冷戦がはじまった1940年代後半から、米国では共産主義的思想の持ち主を徹底的に弾圧した。
ハリウッドとて例外ではなかった。
いや、大衆への影響が大きいことから、その弾圧はすさまじかった。
ダルトン・トランボもそのひとり。
いや、ハリウッドの共産主義の中心人物と目され、徹底的に排除された。
しかし、トランボは変名・偽名を使い、仲間とともに次々と脚本を書き続けていく・・・

という事実に基づいた映画で、とにかく面白い。
興味深い、ではなく、面白いのである。

その面白さの中心は、トランボそのひとにある。
とにかく、信念の人である。
自分を曲げない。
自分にできることは書き続けること。
ただし、主義主張、メッセージを重視するのではなく、量だ。
その量の中から、「質」が現れる。

「質」は、作品の質であると同時に、そのひとの内面の質だ。
「ひと」が認められることで、主義主張を通そうというのだ。

まぁ、やりすぎて、ワーカホリック状態になり、家族との危機も迎えるのだけれど。

この映画では、トランボを演じるブライアン・クランストンも素晴らしいが、妻役のダイアン・レインが素晴らしい。
いつもは控えめだけれども、家族の危機に際しては、言うべきことは夫に言う。
このシーンが良かった。

実話なので、エドワード・G・ロビンソン、ジョン・ウェイン、カーク・ダグラス、サム・ウッド、オットー・プレミンジャーなど、ハリリウッドの面々が登場するが、なかでも、カーク・ダグラスが酷似。
さらに、映画コラムニストのヘッダ・ホッパー役のヘレン・ミレンが憎々しくて、これまた良い。

社会派テーマをエンタテインメント色たっぷりに仕上げるのは、かつてハリウッドが得意としていたものだが、これは久しぶりにそういった類の秀作佳作である。

りゃんひさ