「海よりも深い二人の女性の想い」海よりもまだ深く talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
海よりも深い二人の女性の想い
その一人は、もちろん良多(阿部寛)の母の淑子(樹木希林)でしょう。
大の大人になったとはいえ、自分がお腹を痛めて産んだ我が子といえば、我が子。その生活の安定と幸せとを願わない母親は、いないと思います。
良多と響子との復縁について、何とか説得・仲介を試みようとして、それが叶わないと知るや、「はい。この話は、これでおしまい。」それが、彼女の深い想いから出た一言であったことに、疑いはないと思います。
もう一人は、響子(真木よう子)ではないでしょうか。いくら子供を鎹としてとはいえ、別れた旦那の実家に泊まることは、まずないだろうと、評論子も思います。
しかし、案外、響子も良多への未練を捨てきれずにいたのではないでしょうか。
淑子に問われて「良多さんは家庭向きの人ではないから」と絞り出すように応えた響子の心中は、とても深いものがあったと思います。
「良多さんに他に不平・不満はない。否、むしろ素敵なところはたくさんある。ただ、もっと家庭向きの人でさえいてくれたなら…」。それが響子の本心であったことに、疑いはありません。良多に向かって投げつけた「もう決めたんだから、前に進ませてよ」という彼女のセリフは、その深い深い想いを含んで、余りがあったと、評論子は思います。
「家族」を描くことに秀でた是枝監督らしい一本だったと思う上に、響子という一人の女性の心情を描いたという点で、一編の女性映画としても、決して評価の低くない一本だったと思います。評論子は。
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