「絶妙なキャラクター設定と、絶妙な演技と、微妙な展開」海よりもまだ深く wutangさんの映画レビュー(感想・評価)
絶妙なキャラクター設定と、絶妙な演技と、微妙な展開
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リョウタのキャラクターは、極端なダメ人間として描かれているが、
一方で、現在より未熟であった頃の自分まで含めると同性として共感できる部分が多く、物語に没入できる大きな要因となっていたと思う。
若くして才能を表彰されたことにより社会に適合するタイミングを失い、妻子と別れた経験を持つ私にとっては特に共感ポイントが多かった。
また、女性の「上書き保存に対する見解」がクリアに描かれているのにも好感を持った。
真木よう子演じる元妻はリョウタに対して苛立ちを募らせるも、文学的なポテンシャルにだけは変わらぬリスペクトを置いている点、一度魅力を感じた部分が全て覆ったわけではなく、子どもを育てる上でこうなってほしいという願望とリョウタの人物像があまりに乖離しているから別れを決断をしたのだという心情が、説明的でなくかつハッキリと描かれていて、女性の「上書き保存」の解釈としては納得感が高かった。
一方、特に何に気づいたわけでも成長したわけでもないリョウタが夜中の公園でふわっといい感じの雰囲気を味わい、ラストギリギリで父親の想いに軽く触れ、少しだけ表情が変わるという結末は、そこまでのストーリーに没頭できていた自分にとってもちょっと物足りなかったし、リョウタに共感しづらい人にとっては、全く納得できない展開だったのではないかと思う。
別れた男女のみでなく、母親や姉まで含めて、人物設定と役者の演技が絶妙で、それだけで作品として楽しめたが、是枝作品を初めてあるいは2〜3作目として鑑賞するにはあまりお勧めできない。
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