劇場公開日 2016年5月21日

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「「こんなはずじゃなかった・・・」迷える大人達が織り成す、家族の愛情物語。」海よりもまだ深く 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「こんなはずじゃなかった・・・」迷える大人達が織り成す、家族の愛情物語。

2016年6月28日
PCから投稿

笑える

悲しい

幸せ

【賛否両論チェック】
賛:自堕落で過去に未練たっぷりな主人公が、元妻や息子との時間を通して、少しずつお互いに未来を見て歩み出そうとして行く姿が印象的。静かなストーリーの中で紡がれていく、様々な形の“愛情物語”にも、深く考えさせられる。
否:特に大きな事件が起きるわけではなく、かなり淡々とした展開なので、興味がないと眠くなりそう。

 幼い頃に描いた理想とは違い、不本意な人生を送りながら、
「こんなはずじゃなかった・・・」
と嘆く主人公達。そんな彼らが、久しぶりの邂逅に想いを馳せながら、少しずつ新しい一歩へ考えが変わっていく様子が、淡々とした雰囲気の中で描かれていきます。
 展開は極めて静かですが、そこでは決して絶えることのない「親子の愛」や、壊れてしまってもどこかで残っている「夫婦の愛」、そして形を変えて繋がっていく「家族の愛」と、様々な“愛”がしっかりと息づいています。中村ゆりさん演じる興信所のナツミが語る、
「女の恋愛は、水彩画ではなくて油絵みたいなもの。上塗りするから下の絵は見えなくなるけど、ちゃんと残っている。」
という言葉や、真木よう子さん演じる響子が語る、
「愛だけじゃ生きられないの、大人は。」
といった言葉に、その端々が感じられるようです。そして息子の真悟の、
「宝くじが当たったら、また一緒に暮らせるかな・・・?」
というセリフは、健気すぎて泣けてしまいます(笑)。
 思わずクスッと笑ってしまうような軽快なやり取りも満載です。ちょっと道に迷った大人の皆様に、是非オススメの作品です。

映画コーディネーター・門倉カド