「原案・監督・脚本・編集」海よりもまだ深く エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)
原案・監督・脚本・編集
「日本の素晴らしさ再発見」「日本人ってすごい」みたいなテレビ番組や、そういう感じを狙った商品を扱う店が氾濫している。私はそういう番組や店を目にすると、こそばゆい、居心地の悪い気分になる。当の日本人である私は、生き恥を忍んで苦し紛れに生きている気がする。ので、自ら日常生活をさらして「これは素晴らしい」と胸を張ることはまあしないが、自分の日常をSNSでひけらかしている連中を見ると、こそばゆいし、とうとう胡散臭い奴だな、といぶかる。貧乏な我が家に裕福な家で育ったパリジャンをホームステイさせるのは、私は彼の人類学研究に寄与するのかもしれないが、そんなことより会話が途切れた後の気まずい時の経過を思うと、情けないやら申し訳ないやら、ともかく苦しさに見舞われる方が強いはずだと思う。ヨネスケが隣の晩ごはんを覗くのはかまわないが、タモリが同じことをしても成り立たないだろう、その違和感と似ているようだ。またたとえば、民芸運動という随分と高尚な趣味があった。それへ思うこともまた同じ。奴らのやっていることは拾ってきたヘチマを散々祭り上げて売りつけ金儲けをしている。平凡な庶民的生活を細々と送る庶民を無理やり舞台に上げてスポットライトを当てて拍手喝采を送りその庶民的リアクションを記録観察する、ずいぶんと高尚なご趣味の持ち主に、私は胡散くささを覚える。鼻持ちならない。本作の「原案・監督・脚本・編集」をした是枝に同じものを感じた。裸の王様の逆をやることになった顔ぶれの出演者たちにそれと同じものを感じた。エンドロールで流れる主題歌、ハナレグミという歌手の歌い方にそれと同じものを感じた。どなたも随分と、優雅じゃないか。
こういう姑息な金の使い方をした映画はもう二度と観ないことと決めた。