「手放してはじめてわかる、大切なもの。それは、手放さないとわからない、大切なもの。」海よりもまだ深く 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
手放してはじめてわかる、大切なもの。それは、手放さないとわからない、大切なもの。
ぶっきらぼうでいて核心をつく台詞、たたずまいで匂わす感情、何気なく配する小粋な小道具、人物造形の説明を不要にさせる服装、実在しない人間の存在感、バックに流れる「別れの予感」、、。すべて是枝ワールド。
町田がかつて受けた恩がなにか、それはいいの、言わなくて。町田が、面倒がらずに良多の世話を焼く姿は、良多に父の影をかぶせているわけで、お互い、知らず知らずに今は一緒に入れない親と子を体験しているわけ。
泣けるか?っていえば「そして父になる」のほうが泣けたし、身につまされるか?っていえば「歩いても歩いても」のほうが胸に金属音が鳴るような気分だったし、ほっこりするか?っていえば「海街Diary」のほうが心が強くなれたような気がした。
だけど、大きなドラマがあるわけでもないこの映画は、それはそれでいいのだ。
またしてもでてくる良多。ダメな男。未練たらしいし、平気で嘘を言う。愛想つかされるのも当然。最後に心を入れ替えるわけでもない。だけど、町田が慕いたくなるような父性を持っているんだよな。だから、息子もなついてる。ダメな親父なのに。そこがわからないと、この良さがわからないだろうな。
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