「彼に気を許してはいけない」帰ってきたヒトラー N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
彼に気を許してはいけない
かなりの社会派だった。
まさかこうも巧妙に仕掛けて来るとは思わず、
果たしてどういう気持ちで観ればいいのか。
むしろ気のゆるみを引締めなおす契機に。
登場するヒトラーのカリスマ性がすごい。
そしてまさか現代にいるわけないなら、半笑で対応しているうちに
そのカリスマにノックアウトされて行く人々。
いやこれこそ第二次世界大戦当時、ナチスが台頭したあの頃の再現ではなかろうか。
思わずにはおれず、
だからこそ鑑賞するうちに笑ったり、聞き入ったりして
知らず知らずのうちに感化されている自身にも、ちょっと恐怖を覚えた。
(そう、これがどういう気持ちで観ればいいのか、の原因である)
国民の反応もドキュメンタリー風に挟まれ、
これがツクリバナシなのかリアルなのか翻弄しているようで、
ヒトラーに対して自身の態度を問われている気分になりヒリヒリした。
そしてなによりドイツ本国がこの作品を撮っている、という自己批判精神たるや。
笑いとセットであればあるほど、鋭い知性を感じて止まない。
ロシアとヨーロッパが移民でもめている、とニュースが流れる昨今、
その至る所にあのヒトラーの影は潜むと、人々の心を盗む時をうかがっている。
力むことなく柔らかに啓蒙する傑作だった。
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