「フーシの精神性に感動」好きにならずにいられない 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
フーシの精神性に感動
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童貞で中年の大男が憐れにも恋に落ちる話だ。この男が見掛けに似合わず素直で寛容で優しくて純情で一途なものだから、それだけでも泣けてくる。
ジオラマやラジコンが好きで子供も好き、しかもきれい好きでマメな性格なのに、持って生まれた内気な性格が災いして、中年になるまで女性に縁のない生活を送ってきた。母親の愛人からチケットをもらったダンススクールのレッスンで女性と出逢う。その女性がまともならいいのだが、映画は一筋縄でいかない展開になっている。
女性はプライドが高くて我儘でズボラで、おまけに躁鬱病だ。ほとんどサイコパスみたいなこの女性に振り回されるだけ振り回されながら、主人公フーシは決して怒らず、どこまでも優しく接し、限りなく与えていく。
ほとんど何もいいことがないフーシだが、気にせずに静かに淡々と生きていく。そして人に優しくしつづける。このような奇跡の精神性が禿げて太ってオタクの中年男に宿っているという設定が素晴らしい。
邦題は映画の内容とまったくイメージが異なっており、こんな邦題をつけるくらいならカタカナで「フーシ」というタイトルにしておけばよかった。この傑作映画の日本での興行成績が芳しくなかったとしたら、それは邦題によるところが大きい。
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