「優しい絵柄の骨太アニメ」ソング・オブ・ザ・シー 海のうた kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
優しい絵柄の骨太アニメ
まるで絵本のようなアニメで、キャラクターの表情がとても豊かで魅力的。切り絵のような背景も素晴らしかった。
音楽も極上で、シアーシャの歌もエンディングテーマも胸に染み入る旋律でグッときました。
そんな優しい絵柄の本作ですが、内容はかなり骨太。悲しみ・苦しさと逃げずに真っ向勝負して乗り越える、とても勇敢な物語だと感じました。
ブロナーが海に還ってしまった悲しみと向かい合えず、酒に逃げるコナーと妹のせいにして悲しみを麻痺させようとするベン。おばあちゃんも息子の悲しみに耐えられない。一家の時間は止まってしまっている。ベンは妹をいじめ、おばあちゃんも強引になんとかしようとする。
でも、そんなことをしても何の解決にもならないんですよね。
ずっと恐ろしくて逃げている悲しみに向かい合わないと前に進めない。
マカに至っては、魔法で苦しみから逃れている。まるでドラッグに依存する人のよう。勇気を持って妹を探すベンの前に、優しくて甘い態度で現れるマカはなんとも恐ろしい。
そして、苦しさから逃げるのを止め、向かい合うきっかけになるのは、やはり気持ちが他者に向くこと。シアーシャを守ろう、取り戻そうという気持ちが生まれると、ベンもコナーも自然と勇敢になっていく。そして、その結果、悲しみと向かい合い乗り越えるのだ。
マカと息子の物語は、おばあちゃんとコナーの関係とパラレルですね。同じ顔だし(声も同じだった)。ずっとビンの中に入れてなかったことにしていた苦しさを解放して味わうことで、石化の魔法が解けていく。止まっていた時間が動き出すかのよう。ラストの団らんシーンは感動しました。
また、犬のクーがとってもいい!心理的に大きな問題と向かい合うにはあんな伴奏者が不可欠ですね。クーのような存在に人は支えられて、傷つきから回復していく勇気を得るのではないでしょうか。