「すぐに忘れちゃうかもだけど、さらりと上質な映画!」素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店 Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)
すぐに忘れちゃうかもだけど、さらりと上質な映画!
予告編からサスペンスコメディかと思ってたら、
ちょっといい話で裏切られました。
幼いころ父の死がきっかけで
感情がなくなってしまった
若き貴族の大富豪ヤーコブが、
自分殺しを代理店に依頼するという
何とも滑稽な設定です。
確かベルギーって安楽死が認められてたからか、
日本人には少し違和感ありますけどね。
主人公が同じ依頼者の女性と出会って、
自分を取り戻していく。
初めての幸せでやめたいと思ったら、
時すでに遅し。
そしてどんでん返しあり、ほろりあり。
ラストシーンは、なんておしゃれなんでしょ。
鑑賞後は爽快な気持ちで。
役者がいい。
主役のイェロン・ファン・コーニンスブルッヘさんは、
本国オランダで
司会やコメディアンとマルチな活躍らしい。
だんだん人生を輝かせていく、
グラデーションが上手い。
お相手のジョルジナ・フェルバーンさんも、
オランダで評価されている有名な女優さんみたい。
目が印象的で、
時折見せるおちゃめな感じがよかった。
第70回アカデミー賞外国語映画賞受賞の
マイク・ファン・ディム監督はこれが2本目。
ハリウッドからのラブコールを断り続けて、
母国での制作にこだわったという奇才。
演出もなかなかの力量で、
コーエン兄弟とウディアレンを足したような、
ストイックでチャーミングな世界観がが素敵(笑)
あまり見たことがない、
現代のヨーロッパ大富豪が住んでる
お屋敷を覗けるのも、面白い。
広大すぎてよく手入れのされている庭園に、
そこで働く人たちに、代々の肖像画...。
特筆すべきはカールームに佇む往年の名車たち。
ジャガーEタイプを筆頭に、ポルシェ356スパイダー、
ACコブラ427、ファセルベガ500、
シトロエン・メアリにルノーのF1カーまで。
そんな貴重な骨董品を惜しげも無く
デートで使うんだから、車好きにはたまらない。
絵や雰囲気が落ち着いてて、
普段ハリウッド映画に見慣れていると、
とっても新鮮な気分。
風情のあるオランダ~ベルギーというEU圏の、
素敵な風景に和む。
そこにビバルディにモーツアルトにバッハに
ピアソラの音楽も軽快に絡んできて、
上質な時間が流れます。
ネタバレしちゃうから
いろいろ書けないけど、
テンポもいいし、シナリオもよくできています。
まぁ名作とまではいかないし、
すぐに忘れちゃうかもしれないけど、
上質で、さらりとして、ちょっとだけ切ない。
構えないで観れるそんな軽い映画も、
たまにはいいなぁと思ったのです。