劇場公開日 2016年10月15日

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「制作者・自己表現をする人と自己愛や自意識が強い人に」何者 nankichiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5制作者・自己表現をする人と自己愛や自意識が強い人に

2016年11月2日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

自意識に悩まない人にはなんだかオチのないよくわからない映画かもしれませんが、個人的には最高でした。

30代になっても自分が全然まだそこから抜けきれてない自意識の問題や、周りを見下したり分析して優位に立った気になるような、過去のイタい振る舞いを突き付けられてるようで、途中でもう許してください…ってなりました。

同じ原作の『桐島部活〜』の時よりも人ごとじゃない現在進行形のまだ抜けられていない領域の話で、身に覚えがありすぎて死にそうでした。

表現することの恥ずかしさやサムさに耐えて評価にさらされながら、それでも作るか作らないか。

クリエイションに関わったことのある人や、何かを書いたり創作することが好きな人には色々と感じることがある映画だと思います。

意識が高い系のあるある=そうしないといけない人のつらさがつまっていて、頭良さそうに見せたり、今やってることを周りにアピールして自分を鼓舞したり、しかもそれが周囲への教育的配慮を含めた上から目線だったり、さらにはすべてひっくるめてそんな自分が愛しい…という。

SNSを使った自己愛にふけりづらくなる、ある意味デジタル・デトックスな作品でした。

こんな風にどんどん周囲や構造に客観的になって無限後退すると、「でもやるんだよ」という決断主義になるっていう話でもあります。(という意識が高い書き方)

演劇の人が監督で、最後のある展開があまりに甘くて、(特に脚本を書く人にとって)救済的すぎたとも思うけど、そういう言葉がフィクションでくらい発せられないと、人は「立ってられない」、のかもしれない。

評価される側になって始めない限りはいつまで経っても点自体が付かない、例えみっともなくても。
という、聞いたような事を100分弱で体感として理解できるというのはすごいことです。

『君の名は』みたいな甘いファンタジーもいいけど、若い人はもっと『何者』を観て噛み締めてみるのもいいと思いました。

とか、こうやって書いていること自体にも何かを突きつけてくる、恐ろしい作品でした。

後半の演劇の舞台的な見せ方も面白いし、評価、もっと高くてもいいのになぁ。

nankichi