「日本の哲学とフランスの哲学の融合」レッドタートル ある島の物語 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の哲学とフランスの哲学の融合
クリックして本文を読む
物語はミステリアスで意味深遠で、それは確かにフランス映画を見る感覚と同じである。説明の困難なフランス的な哲学が感じられる一方で、恐らくフランスの観客がこの映画を観たらば、至極日本的な哲学の物語に感じられるのではないかとも思うような世界観。まるで「浦島太郎」や「鶴の恩返し」のように、日本に古くから伝わる神話に通ずるものが根底に流れるのを感じると同時に、それでいて例えばアダムとイブなどを彷彿とさせるような、生命の神秘と命のリレーなんかをも感じさせる、そんな言葉なき物語だ。
映画自体、説明のつかない神話や寓話のような趣があり、個人的には楽しめた。ここ十年ほどのジブリ作品は、ブランドの持つ大衆性と作品が描く哲学とがなかなか融合せず、真意が的確に受け取られないで誤解されてしまうような様子が見えたが、いっそ、この作品のように大衆性を切り離したアート作品を手掛ける会社として今後作品作りをするのも悪くないかも?と勝手ながら可能性を感じた。いまや、細田守のほか、新海誠もその名が全国区に広がった今、思い切ってもっとも大衆的だったはずのジブリが真っ先に大衆性を手放すのも、面白いかもしれないと思った。
コメントする