劇場公開日 2016年8月26日

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「人間は、忘れたくない事も忘れてしまう」君の名は。 ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人間は、忘れたくない事も忘れてしまう

2025年3月12日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

男女の入れ替わり設定、時間のズレ設定が加わる、恋愛ファンタジー系映画。

ファンタジーで、タイムスリップ的要素もあるが、
災害モチーフになっており、そこからくる喪失感、消失感、現実味が、
スパイスになって、侘しくて切ない世界観を強調していく。
絵面はとてもキラキラしててキレイ。
隕石が衝突してる大災害だけど、死体は出てこない。
壊れたものは出てくるが、汚いものは一切出てこない。

作品の中に出てくるアイテムのうち、組紐、糸、米、酒は、日本の伝統文化の象徴、
シンボル的なもの、神事的なものとして登場し、
時空を超える広い世界観である一方で、
日本という狭い土地に、根差した世界観でもあるように描かれている。

日本を背負ってる感じのアニメになっているので、
それが世界的に評価されているのは、素直に嬉しい。

自分がいいなあと思うのは、
主人公2人が、互いを覚えておこうとするのに、結局は徐々に忘れていってしまう所。
第一に、名前を忘れてしまうことが、この作品では強調して描かれているが、
名前だけでなく、出来事であったり、思い出であったり、感情であったり、声であったり、
人間は、忘れたくない事も忘れてしまう。

伝統も、繋いで行くこと、受け継いで行くことを意識的に継続していかないと、
すぐ忘れたり、廃れたりしてしまう。
ロストテクノロジーといって、たとえば日本刀は、生産が全盛期だった頃のような日本刀は、
今の時代では二度と作れないらしい。
外国にもそういう事はあって、たとえば有人宇宙船は、人はかつて、月まで行ったはずなのに、
開発が予算の都合で廃れてしまった今、再び月に行く技術はゼロに戻ってしまい、
すぐには人を、月には送れないらしい。
これだけ科学が発展しているのに。

人類史的な面だけでも、色々考えさせられるが、
人間的、個人的な面でも、結構考える余地があって、
学生の頃好きだった人の声は、もうほとんど覚えていない。
幸いにも、思い出や出来事は覚えているが、
声の再生再現が脳内でできないのは、とても侘しいもので、残念な気持ちになる。
「君の名前は?」と尋ねられるだけ幸せなことだよ。

鑑賞後の余韻がとても良かった映画だ。また観たい。

ソビエト蓮舫
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