「作り手から見ると奇跡的な作品」君の名は。 くま五右衛門さんの映画レビュー(感想・評価)
作り手から見ると奇跡的な作品
作家を生業にしている者だ。
正直、余りにセンセーショナルすぎる作品の為、今日まで観る事に億劫だった。
世間に圧倒的な評価をされた作品が、自分の感性に全く合わない箏が怖かったからだ。
しかし、その不安は杞憂で、それどころか、シナリオライターの視点で見れば、凡ゆる映画において過去最高の傑作と呼んで間違いない作品だった。
全てのシーンに納得性があり、一場面を積み重ねる計算力には自分が凡人だと痛感させられる。まさに、100という答えを1の積み重ねで導いている。論理的な矛盾はほぼなく、僅かな綻びを逆に壮大なロマンに結びつけている。
大衆には分かりやすく感動を伝え、我々作り手には圧倒的な構成力、演出、映像で清々しい敗北感を与える。
唯一、ごっそり抜けている要素はテーマ性。観るものに何を伝え、何を考えさせ、どう動かせたいかという、作品の根本。しかし、この作品はそういう要素を排除したからこその美しさと、純粋さ、普遍性を生み出しているのだろう。
この作品は、この形が完璧なのだ。だからころあらゆる人の心を打つのだろう。
感謝
コメントする
スタコラフスキーさんのコメント
2019年4月5日
かなり以前のレビューなので今更恐縮です。
ほぼ、くま五郎さんのレビューに共感なのですが、唯一テーマ性について意見を異にいたします。
私にはテーマが感じ取れましたよ。私のような見方をする者もいますのでレビューを見ていただければ幸いです。
くまちゃんさんのコメント
2017年8月16日
「論理的な矛盾はほぼなく、僅かな綻びを逆に壮大なロマンに結びつけている」のではなく、「山のようにある論理的な矛盾を美しい作画と音楽で押し切っている」のではないでしょうか?