「被災者として、心を揺さぶられました」君の名は。 SIEBENさんの映画レビュー(感想・評価)
被災者として、心を揺さぶられました
昔から新海作品が好きで、ただそれだけの理由で見に行きましたが、
どこかでチラっと見た「ポスト3.11映画である」という記事のタイトルが目につき、なんとなく引っかかっていました。
レビュータイトルの通り、私は東日本大震災時、岩手県沿岸で被災しました。
当時私の住んでいた地区は自宅を含め大部分が流出し、その中で親しい友人や知人も亡くしました。
奇しくも前日から遠方にでかけていた私は、戻る手段を断たれ、限られた情報の中、遠くから推移を見守ることしか出来ず、非常にもどかしい思いをしたことが強烈な記憶として残っています。
5年半経った今でも、もしも2011年3月11日に戻れたらという考えは頻繁に頭を過ぎります。
この映画で描かれる出来事や、失われた街の風景などは、更地になってしまった私の街と重ねずにはいられませんでした。
主人公の空虚感や喪失感などは少なからず自分に重ねてしまう部分が多々ありましたし、後半の自分の妄想を具現化したような展開はとても他人事とは思えないものでした。
過剰に感情移入し過ぎてしまったせいか、鑑賞後はしばらくフラッシュバックに近い感覚に襲われ、正直なところ精神的にグラつきました。今も心の整理も兼ねてこのレビューを書いています(笑)
自分語りが長くなりました。
雲のむこう、約束の場所から新海作品を見続けている者としては、SFファンタジー要素や美しい田舎の自然と東京の描写(相変わらず新宿周辺大好きだなぁ)とか、男女のすれ違い恋模様とか見覚えのある先生だとか、「新海ワールド」全開ながら、「男女入れ替わり」や「タイムリープ」などよくある設定ながらも一捻り加えられ、今までの新海作品にはあまりはなかった「笑い」の要素も充実し、新海作品の集大成的かつエンターテイメントとしても完成度の高い作品となっており、万人にオススメできる作品だと思います。
そして、震災で何かを失った人(あるいは取り返したい過去を持つ人)にとっては、少なからず思うところがある映画ではないかと思います。