劇場公開日 2016年2月27日

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「Quentin Tarantino」ヘイトフル・エイト Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0Quentin Tarantino

2019年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

興奮

一見さんお断りの超極上のウエスタン映画。
毎回、クエンティン・タランティーノの映画を見ていると頭が爆発しそうになる。そして見終わった後には、自分の文学的、芸術的能力の低さに落胆してしまう。
ここまで世界中で愛され、日本にも多くのファンがいるタランティーノですが、その作品の奥に隠された層の厚さというのは、ただ血が飛び散り、豪快なアクションシーンがあるだけではない。

まず、この映画は2時間48分で何を言いたいのか。それは毎回タイトルが示すように、”ヘイトフル・エイト”、8人の嫌われ者です。しかし、ただ8人の色々な種類の悪人が撃ち合いをするのではなく、吹雪のんかの小さなロッジで誰が正義で誰が悪なのかを醜く描いた作品です。まじで前半から第4章にかけてのキャラクターの関係性が目まぐるしく、かつ滑稽に変化する様子が面白くてしょうがない。映画の超基本でありながら、一番大切なキャラクターのつながりが中心に描かれているから最高。誰と誰が協力し、誰と誰が敵対するのか、どちらが有利なのか、有利・不利を判断する基準はなんなのかこれが全てです。

私が一番好きなキャラクターは保安官のクリス。コロコロと立場を変えながらも堂々と意見を述べ、最終的には自分の想像を超えたことをしてしまうキャラクター。他のキャラクターがしっかりと根を張っているので、このキャラの地に足についていない感じがどうしようもなく滑稽。次に主人公のウォーレン。慎重かつ大胆、さらには残虐的なタランティーノ映画のダークヒーロー的存在。小癪な手を使いながらも、自分の意見は曲げない、ずっしりとしたキャラクター。
このようにキャラクターを説明できるほど、芯を持ってキャラクターが作られていくから面白い。

ブロッキング
タランティーノ監督としての天才的なところは彼のブロッキングにあると思います。なんといっても一番は、ブロッキングでキャラクターの関係性を描くことができるということ。ステージの上下前後左右を広く使ったブロッキングはまさに映画。アングルの違いで表現するキャラクターのパワーバランス。印象的なサイドショットで描くキャラクターの物理的距離感。前後の奥行きを使ったキャラクターの心理的距離感。そして、ドリーやクレーンを使って、それらを流動的に我々に見せてくるから意識的には処理スビードが間に合わない。
そして、今作品でそれを最大化してのが、ロケーション。1つの小さなロッジを動き回るキャラクターとカメラは圧巻。それを実現させたのが、かの有名な種田陽平さん。

ライティング
ロバート・リチャードソンの代名詞とも言える、ハイライトのグロー。今作でも健在。しかし、今作で少し違ったのはその印象的なグローは、一部のシーンでしか使われないということ。それゆえ、タランティーノのチョイスしたクロースアップのフレーミングに、ロバートリチャードソンのライティングが組み合わさって、圧倒的なパワーを持つ映像の完成。
セットの雰囲気ともあいまって、テーブルやバーにキャストされるスポットライトは感情がある。マジですごい。
フィクション的なライティングが光るってことは、それは自然なライティングできてるからこそ。意外とフィルライトのバリエーションがえげつなかったりする。

65mmフィルムにアナモルフィックレンズを使ったウルトラパナビジョン。2.7:1の超ワイドで70mmブリントにするって、もう本当にバカじゃないかな?何%の人がその理想の条件で観れるのか。そこまでこだわるのが作品にも出ている。芸術作品として、今後将来残していく作品として、を考えている。
だから、タランティーノの描くテーマはとてもダークな陰の部分だし、滑稽にも見えるバイオレンスシーンも痛々しく感じるし、チョイスする音楽は歴史を重ねる。まさに文学的。芸術性と文学性と、ユーモアを持ち合わせた鬼才。天才。

Editing Tell Us