或る終焉のレビュー・感想・評価
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【”人が生きる事と死とは何であるか”という重いテーマを抑制したトーンで描いた作品。ラストの衝撃には暫く唖然とし、無音のエンドロールが醸し出す虚無感にも驚いた作品でもある。】
ー 「或る終焉」という邦題が、ダブルミーニングを思わせる、意味深い作品である。
因みに原題は「Chronic」(慢性)である。少し、衝撃のラストの意味が分かった気がする。-
■看護師として様々な、終末期患者に寄り添うデヴィッド(ティム・ロス)。
ハッキリとは描かれないが、息子の死を境に妻と娘ナディア(サラ・サザーランド)とは疎遠となり、孤独なひとり暮らしを送る彼にとって、患者と親密な関係を持つ事は重要であった。
例え、その患者が亡くなったとしても・・。
そんなある日、末期ガンのマーサに安楽死の幇助を頼まれ、デヴィッドは苦悩の末に看護師としては許されない決断を下す…。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・作品を鑑賞して、この独特な作風は、ハリウッドでは出せないだろうと思った。
・劇中に大袈裟な音楽は流れず、デヴィッドは、自らが担当する末期の患者に献身的に尽くす。
ー 最初のやせ細った女性の身体をデヴィッドが丁寧に拭くシーンは、リアリティ感が凄い。そして、デヴィッドは、彼女の葬儀にも立ち会い、帰りバーでは隣の結婚するというカップルに”妻が亡くなった”と告げる・・。-
・次の患者、ジョンは気難しい建築家だが、わざわざ建築の本を買ってきてあげたり、エロビデオを”仕方ないなあ‥”と言う風で見せる程、親密になる。
ー だが、ジョンの家族から誤解され、デヴィッドは職を解かれる。-
・彼は、冒頭SNSである女性のページを見ている。そして、それが彼が別れた娘と分かる久しぶりの再会のシーン。因みに別れた妻とも会っている。別れた原因は、安楽死を迎えた息子の影響なのだろうか・・。
ー この辺りも、”最後”の患者、マーサの”あなたの息子と同じように安楽死させて・・”という言葉のみが、語られるだけである。-
・マーサは末期の癌に侵されており、デヴィッドは、彼女に頼まれ看護師としては、許されない安楽死の手助けをする。
ー だが、彼はマーサの望みを聞いた後、普通の表情で電話を掛けたりしている・・。-
■今作中、ティム・ロスはジムや、街中を只管に走る。死に直面した仕事をしているからなのか、自分は孤独なひとり暮らしだが、健康に生きている、と自らに言い聞かせるように・・。
<そして、あの衝撃のラストシーンである。ビックリする。あれは、安楽死を手伝ったデヴィッドに対する罰なのか、それとも生死は紙一重であると言う事を表したかったのか・・。
だが、今作の原題は、「Chronic」(慢性)である。
デヴィッドは、死に近づき過ぎてしまい、死を慢性的に受け入れる男になってしまった事を、あのラストシーンは暗喩しているのではないだろうか、と私は思った。
無音で延々と流れるエンドロールが、非常に印象深い作品である。>
沈黙の中、老人介護の現実が迫ってくる
とても寡黙な映画だった。特にBGMがなくその場に少し聞こえてくる音だけで、介護される方がほとんど反応がないため、会話はないか、少ない。しかも、結構長い単調な介護作業が映し出される。
回復する見込みがなく家族も介護者に頼らわずを得ない。何度か出てくるシャワーで高齢者の裸体を洗うシーンは自ら親を介護した経験のある私にとっては、今度は自分が介護される側になるのだと、頭をよぎりながら見ていた。
一方で、介護者と高齢者の密室のプライベートな世界と、家族や親族の反応。高齢者自身のプライバシー。生きていく気力もなくなっていく様がありのままに映し出される。
ほとんど沈黙が多いがゆえに、それは何か声に出せない心に押しとどめている「苦悩」なのか、それとも仕事としての対象物ゆえの無感覚なのか。
主役のティム・ロスは一人黙々と仕事に打ち込むが、高齢者を抱える家族、ティム・ロス自身の家族。その関係性と会話のやり取り。ほとんど状況説明らしいものはないが、その言葉に注目してほしい考えさせられる映画であった。
走る
固定カメラの長回し
二回見た
GAGAの宣伝に騙されました。
人生は手放しで喜べるものばかりではない
終末期患者の在宅ケアをする看護師ディヴィッド。物語は入浴介助や化学療法による副作用に体力を奪われていく患者のケアなど看護の風景を淡々と描いていく。在宅看護という大変な仕事を淡々とこなし、仕事以外はほぼ何もないといった生活スタイルから、徐々にディヴィッドの過去が浮かび上がってくる。
物語は、ディヴィッドが看護する患者との密接な関係性にフォーカスしていて、その真摯なまでに献身的な看護に、彼自身の過去への深い贖罪(中毒とも思える固執)が見てとれる。
死への道程。誰にでも起こりうる肉体的な人生の岐路。看護師という最も生と死に近い役柄をティム・ロスが素晴らしい演技で魅せてくれた。
ワンカット長回しの看護シーン、少ない台詞、患者の家族と深く関わらない過去のある男性看護師、息をのむ結末、そして囚われていた過去からの解放。マイケル・フランコの脚本と演出、特に淡々と何も変わらない生と死の日常を真っ向から描いた脚本は、この映画のテーマを際立たせていて良かった。
すっきりしない。後味も良くはない。人生はいつも手放しで喜べるものばかりではない、むしろ「あからさまなもの」なのだ、ということを明確に提示した作品でもある。
数えきれない苦しみの足音
看護師は看護の仕事だけをしてりゃ…
最後は衝撃的な結末でした
これからどうなるんだろう…?!
画面に見入ってた時にあれですからね〜
あの結末は医の神の怒りだったのでしょうね
看護師の仕事の領域を逸脱してしまった主人公に下された神の怒り
看護の本質を自ら捨てて一人の人間として情に流されてしまった主人公はもはや看護師失格です
医療職は医療人である前に人間です…なんて甘えは許されないのでしょう
主人公が道を外した原因を作った患者との出会いは自己犠牲あたりまえの看護師の鏡?を地で行く主人公に対し神の与えた試験課題だったのでしょう
その試験に主人公は落ちてしまった
だからあの結末…
もし仮に試験をパスしてたら…患者にとって幸せな結末になってたかもしれないし、より不幸になっていたかもしれない…
それは神のみぞ知るでしょうね
嫌な感じが後を引く
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