劇場公開日 2016年5月28日

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「沈黙の中、老人介護の現実が迫ってくる」或る終焉 M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5沈黙の中、老人介護の現実が迫ってくる

2021年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

とても寡黙な映画だった。特にBGMがなくその場に少し聞こえてくる音だけで、介護される方がほとんど反応がないため、会話はないか、少ない。しかも、結構長い単調な介護作業が映し出される。
回復する見込みがなく家族も介護者に頼らわずを得ない。何度か出てくるシャワーで高齢者の裸体を洗うシーンは自ら親を介護した経験のある私にとっては、今度は自分が介護される側になるのだと、頭をよぎりながら見ていた。
一方で、介護者と高齢者の密室のプライベートな世界と、家族や親族の反応。高齢者自身のプライバシー。生きていく気力もなくなっていく様がありのままに映し出される。
ほとんど沈黙が多いがゆえに、それは何か声に出せない心に押しとどめている「苦悩」なのか、それとも仕事としての対象物ゆえの無感覚なのか。
主役のティム・ロスは一人黙々と仕事に打ち込むが、高齢者を抱える家族、ティム・ロス自身の家族。その関係性と会話のやり取り。ほとんど状況説明らしいものはないが、その言葉に注目してほしい考えさせられる映画であった。

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M.Joe