「主題は「恋」よりも「生きる」こと。」ブルックリン バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
主題は「恋」よりも「生きる」こと。
現代の価値観から、主人公に主体性がない、結局は養ってくれる男性を天秤にかけているだけ、といった感想をよく目にした。
本当にそうだろうか。この映画が描いているのはむしろ選択肢が非常に限られていた時代に、ひとりの女性が人生のわずかな可能性を模索する物語ではないか。
日本でも少し前までは、結婚は社会的にも経済的にも「生きる」ためのほぼ唯一の選択肢だったし、それは本作が描くアイルランドでも同じだったろう。
祖国を飛び出した彼女は、新天地アメリカでアイルランド移民のコミュニティに身を寄せる。これも生きていくために当然であり必然の選択だった。そんな彼女がイタリア移民の男性と恋に落ちるのは、国際結婚くらいにハードルが高かったはず。
現代にしてみれば些細なことも、彼女にとっては自分の人生をつかみ取るための必死の決断。やはり自分には、果敢に時代に立ち向かった雄々しいヒロインの映画である。
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