「疑惑なくドーピング確証」疑惑のチャンピオン ももぞう6さんの映画レビュー(感想・評価)
疑惑なくドーピング確証
1993年、
21才のランスは
完走を目標にツールド・フランスに参加していた。
ってことは、まだバリバリじゃなくて、下っぱの選手だったんだな。
だからその三流選手をぬけるために三週間後、
年はかわって1994年、
ベルギーでは販売されているエポなる
筋肉増強剤
つまり
ドーピングに手を出す。
このとき、ドーピングの魔術師、ミケーレ・フェラーリって医師に相談もしているです。
「勝てる体になりたい」
と。
でも、この時点では「ツールドに向いてない体だ」と断れて、
ランスのドーピングはエポだけ。
94年のこの時点で、医師がはっきり
「無謀な筋トレの時代は終わった。
これからのスポーツは科学だ。確かな実験結果による、
ピンポイントな練習によって
スポーツは飛躍的に進化する」
って叫んでいるんですな。
わたしがこの映画を見たときは、まだリオのオリンピックは開催していなかったが、
このあとのオリンピック情報を知るところ
(わたし自身は一度も見ていない。ただ新聞等のメディアや家人による情報にだけだが
日本は金メダルの数が過去最高に多かったそうだ)
結局、オリンピックは金持ち国しか勝てない競技になっていることを知り
ますますうんざりした。
練習にしても、
専属のトレーナーや、医師、管理栄養士がつき、
競技機具
たとえば水着とかラケットとか
最新の技術が施されている。
そんなもん、裸一貫で勝負しているアフリカの人々にとって、決して有利ではない。
あんな高価な水着
後進国が開発もできないし
買えるはずもねぇだろうが。
それで対等と言えるのか。
本当に嫌なオリンピック(もとから嫌いだったし、意味もなかったけれど)になりましたね!と!!さ!!!
四年か
五年かしらんが
日本でオリンピックが開催されるそうだが
決して、
一秒たりとも
開会式、および競技を見ない、
そう決意を新たにしたわけだが、
家人および祖父母宅では
開会式のチケットが買えるものなら買うし(バカバカバカ)、
テレビ中継はむろん見る、と六歳の娘までが言っている。
なのでその時期、旅行にでも行こうか考えているのだが、
わたしはなぜこんなことを書いているのだろう。
ツールドの映画に本題を戻すべきではないか?
で、エポのドーピングを繰り返していたランスは
25歳で、
ステージ3の精巣がんになってしまった。
睾丸と、脳に転移も見られるという・・・・・
病院の廊下を、点滴の棒に頼りながらよろけて歩くランス
非常に壮絶で
つらいですね。脳の手術のためにハゲにもなっているし・・・・
ランス、どうなるんだろう、
こんなボロボロになって・・・
と心配していると
命からがら(わたし、この表現好きですね?過去何回も書いた記憶が・・・)
退院して
先のドーピング医師フェラーリのもとを訪れて
ドーピングのプログラムを組んでもらうんですよ。
99年、第86ツールドでは、病気回復後、ランスが初めてトップに。
ここで自転車競技のシーンが入りますが、
山を登る自転車の群れとか、
すごーくうまいロングショットで、
どこにカメラ置いたら、全景入れて、スピード感とかっこよさを盛り込めるのかなぁ
すごい上手だよね。
いや、相手はプロだから当然なんだけれど、
山で走る自転車のかっこよさがよく撮れていると思います。
単調だけれど緊張感のある音楽もいいですよね。
で、ランスなんだけれど、やっぱりおかしいんですよ。
病気前一度もトップになったことのない男が
初トップ。
それもすべて最高のタイムでトップになる・・・
昔のランスはブレーキが多く、減速していて、39位だったのに
病気後はトップになる・・
おかしくね?
とスポーツ記者・ディビットが気づくんだけれど、
みんな見て観ぬフリをしているんですよ。
これ、賭けとかやってんだろうなぁ。
日本でも野球賭博があるように、フランスでもツールドは裏賭博のもとになっているんだろうなぁ。
ほんで一回勝つと、がんとデカいスポンサーがつくわけだし、
なんか引くに引けないんですよね。
あと、ランスの薬物疑惑が暴かれにくかったのは
彼が”癌”を隠れみのにしていたってこと。
ツールドやりながら、
癌患者のサポートをやっていて
本も出したし
癌サバイバー(なんて日本語。使いたくなかったが、鳥越さんが使っていたので使ってみた。
やはり書くべきではなかったか・・・)
向けの講演会や
慰問会をやっていて、
「善い人」
の顔で売っていたから
薬物疑惑を正面からぶつけることはなかなかできなかったんでしょうな。
ドーピングの手は映画でもあばかれていて
最初に点滴打つ前の正常な血液を取っておいて、
それからドーピングやって、
検査のときに
もとの正常値の血液を点滴で打ち直して、
とか。
あとチーム全員でドーピングやってんですよね。
車のなかで、みんなで笑ってベッドで点滴打ちながら、試合の話をしたり。
でも優遇されるのはチームの中のただ一人、ランスだけ、なんですよ。
ツールドで連勝
マイヨ・ジョーヌ着ているランスは
豪邸にプライベートジェット機、CM出て、金持っているけれど、
チームメイトは、チーム運営金のために自分の自転車すら売られちゃったりして、すごい差があるんです。
こんなことしていたら、仲間から不満が出て
ドーピングが明らかになるのに・・・内部告発のもっともたるパターンやな
って劇場でつぶやいていたら
案の定、202ツールのときの、ランスのサポート役をやるフロイドって男がやたらやたら演技派で
もう目の動きだけで
不満とか挙動不審とか
田舎でさえない半生送ってきた過去とか表現してしまって
ついにおしっこで陽性出してしまい、
ジュネーブの自転車競技会で査問にかけられんです。
足ひっぱられたランスも査問にかけられたけれど、
どうどう
「やってない」
できりぬけて
・・
こうしてランスのドーピングはとどまることを知らず、
ずっとずっと続けられる。
大体精巣がんになったのも若いうちから薬漬けだったのが原因だというし、
エポにコロチゾン、ステロイド
テストステロンビ
ほんとにいろいろ打ってたのね。
そして、ランスはドーピング自体に疑問は感じていなかった・・
勝つためには当然であり、
むしろヤクに対して苦悩しているのはランスチームのフロイドとか・・
やっぱりその辺が面白いですね。
彼が苦悩したのは最後、自分のドーピングがばれて
永久追放されたときだけ。
ファンを欺いていたとか
癌サバイバーを利用していたとか
ズルだったことに対する恥とか
いっさいないわけ。
カメラが静かに上下に揺れて、
左右を行ったり来たりして
目の動きを追って
彼の演技を動き出す・・・この最後のシーンがすごいっす。
ベン・フォスターはランスになりきっているというか。
こういう人間だったんだなぁ、としみじみするシーン。
ランスのうそつき自伝「ただマイヨ・ジョーヌのためだけでなく」も読んでみたくなりましたね。