「どっちの現実が本物?メキシコの異世界物語」パラドクス sasさんの映画レビュー(感想・評価)
どっちの現実が本物?メキシコの異世界物語
最初何気なく単に無限ループで最後脱出カタルシスもの?かとぼやっと見始める。階段ループのお兄さんがフィリップkディック 時は乱れてを読み耽ると言うかちぎり読みしてるあたりから身を乗り出す感じに。
冒頭のおばあさんがドレスでエスカレーターに横たわってる姿は顔のシワの隅々までアップする形でショボショボした目のコントラストでなにか映画というより現実の生活感に引き戻された(後でわかるがここがこのおばあさんに取って現実世界との唯一にして最後の接点だったんだね)。
その後の新婚ほやほやの蜜月カップルがホテルに入ってくるが、まさか同一人物とはつゆ知らず。
更には警察官が2人の兄弟に銃を突きつけていたら屋内式非常階段に入って警察官が1人を銃撃したところではいループ!屋内無限ループの密閉具合はかなりの怖さ。
次の家族はにメキシコ荒野の一本道ではいループ。まだこちらの方が生き残れそうには思う。
これらのストーリーは繋がりストーリー間でもループしている設定とは想像もしてなかったので面白かった。ただストーリー感の継ぎ目が粗い感じがしたがわざとかな?
全体に流れるトーンと世界観は気に入った。
陰謀論的恐怖、現実生活に対する疑い、人生の意味と過酷さ、人と人の関係とは、若いということは?老いるということは?どれも現実生活では無視しがちだが、実は無視できないかなり大きめのテーマだ。映画は物語でこんなテーマを想起させ自分の思考を再構成してくれるのでありがたい。
メキシコ映画にありがちなグロテスクさと開けっぴろげ感とどぎつい表現に慣れれば、今の21世紀の戦争準備世代にも幅広く楽しめるかなと思う。色々と伏線散りばめてくるが、見てる人に適宜拾ったらどうですか?形式なので自分が頭悪くなった気がした。ただ何か心に訴えるストーリーであり、ちゃんと理解したいなと思わせる話ではあった。