「悪夢なら覚めて」グッドナイト・マミー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
悪夢なら覚めて
“顔隠し”はホラーやミステリーの常套手法。
『犬神家の一族』のスケキヨは本人と偽物が巧みに入れ替わるトリックだったが、こちらは…?
本人か偽物かと思わせといて、どんでん返し…!
森と畑に囲まれた人里離れた一軒家で暮らすエリアスとルーカスの9歳の双子。
母の帰りを待ちわびていたが、帰ってきた母は顔を包帯で巻いていた。整形手術を受けたというが、優しかった母の性格が別人のように冷たく変わっており…。
本物の母か、兄弟は疑念を抱き…。
前半は兄弟の母に対する恐怖。
不気味な包帯姿。
ある時見た、包帯を取った際の鏡越しのギョロッとした目。
過剰な流血やグロはナシ。かつてのジャパニーズ・ホラーのように、抑えた演出でじわじわ恐怖を煽っていく。
が、後半は一転。本物か否か、兄弟は母を試す。
その行為はやがてエスカレートしていき、母をベッドに縛り付けて拷問。
子供故死に至らしめる残酷な拷問ではないが、口を接着剤で塞ぐ、目を虫眼鏡で焼く…など、地味ながら痛い!怖い!
母は絶叫。本物のママよ!…と。
兄弟は完全に偽物と思い込んでいる。
もし、本物だったら…? 考えただけでも恐ろしい。
本当に母は本物か…? 驚愕のオチは…?
伏線は張られていた。
母が帰ってきた時、外で遊んでいた兄弟の片方は服が全く汚れていない。
額に当てたカードをヒントを出して当てるゲーム。カードの答えは、“母”。子供が二人などすぐ分かるヒントを出しても答えられない。“子供が二人”に対しては、かなしく顔をひきつらせる。
食事の用意も一人分。まるで、子供が“一人”のように…。
察しが付いてくる。
子供は一人しかいない。
…いや、正確に言うと、二人だった。
ある時、ルーカスが交通事故で死んだ。
エリアスはルーカスの幻をずっと見、一緒にいる。
母の顔の包帯もその時の事故で。ちなみに、母は本物。
兄弟の死を受け入れられなかった。
母の言葉を信じれなかった。
ルーカスの幻も吹き込まれ、戦慄の行動に出るエリアス。
火を放つ。
炎に包まれる母。
燃え盛る家。
エリアスは…?
ラストシーン。とうもろこし畑で戯れる母と兄弟。
母もエリアスも悲惨な最期を迎え、けれどもあの世で再会出来、母子3人にまた幸せがやって来たという事か。
これはバッドエンドか、ハッピーエンドか。