牡蠣工場のレビュー・感想・評価
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淡々とした日常
日常が参与観察のカメラによって綴られている映画。映画に出ていることをちょっとイシキした人たちが、構えずに過ごしているその日常の凄さを感じた。カメラの外にはみ出ている風景、私たちはイヤでも私たちを演じている。猫も猫を演じているのかな? 退屈かなと思ったけれど、面白かった。
やはりおもしろい!
カメラマンを店員と間違え「これいくら?」と尋ねるおばあさん。バッサリと中国人をディスるおじさん。「こんな感じでいいですか?」と撮影を切り上げたがる若夫人。自分が死ぬところだったことをわかってるのか?って程ヘラヘラしてるおじさん。それを暖かく見守る牡蠣クルー。。事欠かない笑いの要素だけでも楽しめる。カメラを向けることで少なからず人々は演じているわけだが、その演技の先にその人のキャラクターが透けて見えるのが不思議。やはりおもしろい!
ドスン
僕は想田作品が大好きで、演劇以外は全部見ている。
牡蠣工場は、あまり前評判が聞こえてこなくて、あまり良くないのか?と危惧していた。なので実際に劇場に確かめに行った。
想田作品といえば、何気ないシーンの羅列でも、全体を通して見ると、段々とテーマが見えてきて、深い所まで連れて行ってくれるという特徴があるが、今作はそこへ連れて行ってくれる様な重要なシーンが、特に前半は少なくて、結果全体を通してみたときに、比較的凡庸な作品になってしまったのかなと思った。
特に前半は、牡蠣の音とかは心地良かったけど、退屈だと感じる人も少なくないと思う。実際僕の隣に座ってたおばさんは寝てしまっていたくらいだ。
以前想田さんは、どんなものを撮っても面白くなるんだ、と言っていた。確かに今作も面白くなってはいるが、他の作品と比べると成功率は低めだと思う。
とはいえど、良いシーンは幾つもあった。
例えば女性が話しながら昼食を作るシーンや、海に落ちてしまった人を助けるシーンは見入ってしまったし、
撮影はシャットアウトだ、と言われるシーンではピリピリとした緊張感が伝わってきた。
特に、2人の中国人がやってきて、牡蠣の剥き方を教わる所なんかは、ダルデンヌ兄弟の作品を思わせる様な、素晴らしいシーンだった。共通の言語で会話が出来なくとも、コミュニケーションがとれたときの心地良さはとてもほっこりさせてくれた。
しかし、その翌日に実際に作業を始めると、やはり言語の壁が大きく、何も伝わらない。
中国人2人は一生懸命手伝おうとするのだが上手くいかず、呆然と師匠の作業を傍観するしかない。
このシーンで映画が終わる為、とても突き放したエグいラストになっている。
前日のホッコリからのこの挫折感は、
さすが想田さんだなと思う。
そういえば想田さんの作品は、結構突き放して終わるのが多い。
映画としては、あの先からが面白そうな気もするが、あの終わり方は悪くないと思う。
想田さんのインタビューを読むと、あの後に撮影をそろそろ終えてほしいと言われ、辞めざるを得なかったが、あそこで終わるのも悪くないと思った、と言っていた。
ドキュメンタリーならではだなと感じた。
インタビューを読むと、
『今、同じときに牛窓で撮った映像を、別の映画にするために編集中なんですけど、86歳の「ワイちゃん」という漁師の方がメインで、こっちはもっと単純に「海の男」の映画になるかもしれないです。編集中なのでまだわからないですけど。』
ということなので、そちらも必ず観察しようと思います。
日常が面白い
全く今の私の日常と異なるし、
変な加工が入っていないから、リアルに感じました。
これが社会科の授業のビデオ教材みたく、
妙な理屈、例えば経済的な理論、解説などが
入ってたら、退屈に感じてしまったはずで。
第一次産業だとか3Kだとか、若者が来ないだとかも
取材で直接、当事者の口から出てるから、
ホンモノ感が強い。
それに加え、私生活も描くから面白いのかな。
あと、人の心理も。
後半でおじいちゃんが、突然、
緊張感のある存在?になるのだが、
思えばその伏線もあったり。
記録ベースの内容だからこそ描かれた
偶発的なアクシデントでした。
偶有性を折り込んだ作成手法は
リアル感、新鮮さ、自分がその場を体験してるような感覚を提供してくれました。
ドキュメンタリーならではの楽しみです。
また、作業としては同じことを繰り返しながらも、
取り巻く環境の変化もあるために
(中国の労働者が入ってきたり、
作業者自らが震災で宮城からやってきたり。)
実は完全に同じことの繰り返しではないことも
そこから見えてきました。
これは、私の日常においても言えること。
また日常に戻り、それを楽しんで生きたいと
思いました。
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