「オリジナル版の悪いところを踏襲したかも」シークレット・アイズ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
オリジナル版の悪いところを踏襲したかも
観る直前まで気づかなかったのだが、本作は2009年度米国アカデミー外国語映画賞を受賞した『瞳の奥の秘密』のハリウッド・リメイクとのこと。
オリジナルにあまり感心しなかったので、リメイク版はどんなものかしらと恐る恐るの鑑賞と相成った次第。
9・11のテロ事件から数か月後の2002年の米国ロサンジェルス。
FBIが対テロ監視特別捜査を行っている最中、監視中のイスラム寺院近くのゴミ箱からひとりの少女の死体が発見される。
死体は、その特別捜査班の一員ジェシカ・コブ(ジュリア・ロバーツ)のひとり娘だった。
ジェシカの同僚レイ・カステン(キウェテル・イジョフォー)は、新進検事補のクレア・スローン(ニコール・キッドマン)とともに、犯人の目星をつけるが、容疑者のマージンはテロ対策班の内通者だった。
アンタッチャブル(不可侵領域)として、主任検事のマーティン・モラレス(アルフレッド・モリナ)から、マージンへの追及ストップがかかり、結果として犯人逮捕には至らなかった。
それから13年・・・
犯人逮捕を断念した直後にFBIを辞め、ひとりで黙々とマージンを追っていたレイは、ある日、名を変えたマージンが刑務所に収監されており、先ごろ釈放されたことを発見する。
マージンの再追及・調査の再開をFBIに依頼するのだが・・・
というハナシ。
大筋はオリジナル作品と大差はないが、少々の変更が加えられている。
1.過去の事件と現在との年数差が、25年から13年と短くなっている
2.過去の事件に、9・11テロ事件が係わっている
3.主人公の役どころが、検事の助手、離職後に過去事件を振り返って小説を執筆する、というものものから、FBI離職後も警備会社に勤めながら丹念に犯人を追っているというように変更されている
4.過去の事件の被害者の家族構成が、原本では主人公の友人の妻だったものが、女性の同僚の娘に変更されている
1と2については、それほど気にならない(というよりも、2はかなり上手い変更)が、3と4は映画の質感にかなりの影響を与えている。
3の主人公の役どころを変えてしまった故に、現在と過去の描写が、どちらも事件の捜査になってしまい、過去と現在の差別化が図りづらい。
結果として、現在と過去とも同じような映像となり(工夫はされているが)、観ていて混乱しかねない(というか混乱する)。
4は、リメイク版を決定的にヘンテコリンにしてしまっている。
オリジナルでは、過去の事件の真相を追うなかで、主人公と女性検事との間の恋愛感情がふたたび燃えさかるという展開があって、これはこれで少々ヘンテコリンな感じがしたのだけれど、それは被害者遺族が主人公の男性友人ということで、まぁ、どことなく腑に落ちなくもなかった。
けれども、今回は、被害者遺族が女性、それも母親ということで、終盤の展開が彼女側に大いに寄り添っていき、主人公と女性検事との恋愛話が、映画の中で宙に浮いた感じになってしまっている。
そこへもってきて、3の過去と現在のカットバック演出がヘタなので、誰に感情移入していいものやら、観ている方としては困ってしまった。
たしかに、エンディングは、オリジナルにもう一工夫して、囚われていた被害者遺族の感情の解放や、犯人を取り逃がした上に、被害者に対する贖罪意識を感じている主人公の踏ん切りなど、目を瞠(みは)るべき展開があるのだけれど、そこへ至るまでの語り口がうまくない。
過去と現在のカットバックなど行わず、過去の事件→現在の再調査という語り口にして、主人公と女性検事との恋愛譚は軽くすべきであったと思う。
オリジナルのいただけない部分がより悪い方向で出てしまった感じがする。