「圧巻の銃撃戦」ディーパンの闘い kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻の銃撃戦
開巻、スリランカの場面にまずは衝撃を受ける。死んだ戦士たちをまとめて焼いている。
戦争下の町や貧民窟を描写した映画はたくさんあるが、それらを観るたびに日本の平和と治安に安堵する。
女が避難民のキャンプで手当たり次第に訊ねて回っている。「この子はあなたの子?」
やがて、親を亡くした少女を見つけると、その子を連れて主人公のもとへ。
元兵士の主人公と、件の女と少女。
家族を偽装して難民として国外へ出るのだが、少女を説き伏せる場面もなく、暗黙のうちにお互いの利害一致が了解されているのだろうか。
果たして、送り込まれたフランスのとある高層アパート。
これが、戦火のスリランカと変わらない危険な臭いがする怪しい場所だ。
少女を地元の学校に入れるが、逃げ出して主人公にすがりつく。「一緒に帰りたい」
他人同士の偽装家族に芽生える絆の兆しだ。
この映画で心を打つ最初の場面。
夜、主人公の部屋に「一緒にいていい?」と、少女が入って来る場面もある。
母親役の女とうまくいっていない。
女も20代の若い娘である。子供をもった経験はない。
窓越しに同世代のフランスの娘たちを見つめ、何を思っていたのだろうか。
主人公は、女が入浴していると気になってしょうがない。
そりゃあそうだろう。
だが、なにもしはしない。
主人公も女も、勤勉さが周囲に認められはするが、そこは麻薬密売組織の巣窟だった。
危険な環境であることは、母国と変わらない。
少女が「優しくして」と女に懇願し、二人は打ち解ける。
女と主人公も結ばれる。
全編通じてほんの一瞬、幸せな空気が流れる。
3人は、お互いを家族として生きていくしかない。
ならば、女は少女に死んだ弟と同じように接すれば、擬似母子になれる。
男と寝てしまえば夫婦になれる。
関係を進捗させたのは、女なんだなぁ。
しかし、それも束の間。
麻薬密売ギャングたちの抗争が表面化し、たちまち危険にさらされる。
主人公たちには容赦のない物語展開だ。
が、ここからがこの映画の見せどころ。
主人公は、一人で逃げ出そうとする女を咎める。が、少女と二人で逃がしてやろうとする。
女は主人公の優しさを改めて知る。
女を助けるためにギャングたちの抗争の直中に突入する主人公。
銃撃戦の激しい描写は、リアルだ。
本当に銃弾が飛んでいるような迫力。
フランスには実際にあんな場所があるのだろうか。
警察の手も届かない無法地帯のようだった。
戦場からやって来た主人公は、正義のためではなく女のために戦う。
カッコいいじゃないか!