「ディズニーの「美女と野獣」のイメージを壊すことなく、忠実に再現した実写版。」美女と野獣 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーの「美女と野獣」のイメージを壊すことなく、忠実に再現した実写版。
ガブリエル=スザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ原作本の映画化ではなく、1991年のアニメ映画の実写リメイクとしてのこの作品。確かに、アニメ映画を知る者が見れば、既視感のあるヴィジュアルとストーリー展開の連続。それを物足りないと思うか安心ととるかはそれぞれだと思うが、私としてはこれでよかったという風に思う。「シンデレラ」はさすがにアニメ映画から50年の月日が経ているので、現代の価値観への配慮が必要になっており、そのまま実写に転換するだけでは成立しなかったのが頷けるが、一方で「美女と野獣」に関しては寧ろあのアニメ映画の内容をそのまま踏襲した方が満足感は高いだろうと踏んだのも納得できる感じ。確かに冒険心はないけれど、余計な手を加えなかった分、本当に安心して見ていられる。それでいて、アニメ映画では描ききれなかった余白の部分をきっちりと埋め、また伸びしろとなる部分をしっかり伸ばして映画にしている印象なので、本当に大満足の映画だった。
私はIMAX3Dで鑑賞したが、オープニングからバラの花が襲い掛かってくるような迫力とその後も絢爛な舞踏会のシーンも、ゴールドのインテリアがベルのドレスに刺繍されていく様子なども、ありとあらゆる映像演出が本当に目の前で手に取るように映し出されて何しろ美しかった。そんな視覚的な迫力も手伝ってか、本当に舞台のミュージカルを観ているような気分になった。映画としてのミュージカルというより、舞台のミュージカルを疑似体験しているような感覚。歌声の重層感とスクリーンを越えてこちらに迫ってくるような見応えと華やかで美しいシーンの連続。まさに圧巻だった!
まさしくベルを演じるのに相応しい美しい容姿とちょうどいい年齢になったエマ・ワトソンが一際チャーミングで魅了された。「ディズニー・プリンセスを演じる」ということに対する気負いがなく、ディズニープリンセスとしてのベルではなく、一人の女性としてのベルを演じているような感じが伝わるかのよう。話をするときの落ち着いたアルト声も素敵だと思ったし、もちろん歌声も素晴らしかった。
難しいことを考えず、とても素直に「楽しい」「素敵」「美しい」と言えるような、それでいて、映画とミュージカルのそれぞれが持つ特有の贅沢な充実感を一挙に味わえる、そんな映画だった。