「アリス、お前、ふざけんなよ!」アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アリス、お前、ふざけんなよ!
ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」の後日談を描いた「アリス・イン・ワンダーランド」の続編。
前作は日本でも118億円を稼ぎ、世界的メガヒット作となったが、自分的にはまあまあ、好きなティム・バートン監督作品でありながらそれほど面白いとは思わなかった。
なので、特別楽しみにしていた訳でもナシ、今回バートンが監督じゃないし…。
夏の話題作の一本なので一応見ておくか、くらい。
両親の死という悲しい過去の記憶に囚われたマッドハッター。
再び不思議の国を訪れたアリスは彼を救う為、時を遡る…。
前作はまだ「不思議の国のアリス」をベースにしていたが、今回は後日談の続編という事で、ほぼオリジナル・ストーリー。
鏡を通り抜けたり、巨大チェスは「鏡の国のアリス」からのモチーフもあるようだが、原作に縛られないイマジネーション・ワールドは前作以上。
特に今回のキーである“時”を具現化したビジュアル、アリスが時を遡る“時の海”など、3Dで観た事もあってアトラクション的なファンタジーの醍醐味たっぷり。
新キャラクター“タイム”も気に入った。
予告編じゃただの悪役のようにも感じたが…、見てのお楽しみ。
演じたサシャ・バロン・コーエンも妙演。
(3D吹替で鑑賞、声を担当したのがアノ人だとニュースで聞いてすっかり忘れてたけど、メチャクチャ巧い!)
冒頭から、亡き父に変わり貿易船の船長として荒れる海をも乗り越えるアリス。
舞台となってる時代では女性の社会進出なんてまだまだ。
演じたミア・ワシコウスカも演技力を増し、自立し逞しい女性像を体現。
友を救う為危険な時の冒険に出る。
エンタメ映画なのでネタバレってほどじゃないが、今回もアリスは不思議の国の危機を救う。
昨今のディズニー作品に一貫している強いヒロイン像。
その行動力にこれから称賛の声が相次ぐだろうが、こう言いたい。
アリス、お前、ふざけんなよ!
そもそも、今回の不思議の国の危機のきっかけはアリスではないか。
友を救う為は聞こえはいいが、忠告も無視し、あまりにも身勝手。
それなのにまた不思議の国を救った英雄となり、お尖めは一切ナシ、現実社会での問題も解決し、最後は時について知ったような事を言う。
誰かこの娘を罰して!
勿論身勝手な行動を取るアリスを通して愚かさを訴えているのは分かるけど…、自立した行動力と身勝手を混同してはいけない。
監督が変わっただけでスタッフもキャストもほぼ続投。
お馴染みのキャラも皆帰ってくる。
前作を見た時から一番お気に入りのキャラクターだったのはやっぱり、赤の女王。
「首をハネよ!」の暴君だったけど、このファンタジー世界で何故か最も人間味を感じた。
その妹、白の女王。常に手も仕草もふわふわな感じは結構好きだが、前作を見た時から何故か腹黒さを感じた。
で、今回、この姉妹の秘密の過去や、何故赤の女王が悪い性格になったのか、その要因でもある頭が大きくなった理由も明かされるのだが…
今回ばかりは赤の女王に同情してしまう。
また悪さはするけど、妹からたったのあの一言を、見ている自分さえも聞きたいと思った。(ついでにアリスの口からも…)
それにしても、ヘレナ・ボナム・カーターとサシャ・バロン・コーエン、もはや夫婦漫才!
話は分かり易いし、ビジュアルも含め素直に楽しめるTHEファンタジー!
前作よりドラマ性はあったし、教訓や普遍的なメッセージも込められている。
過去は変える事は出来ないが、そこから学ぶ事は出来る。
悲しみは時が癒してくれると簡単には言えないが、その為に奔走してくれる大切な誰かもいる。
エンディングのアラン・リックマン追悼にも心打たれ、前作より面白かったと思う。
だけど、どうしてもどうしても今回のアリスの行動が許せず…。
ファンタジー映画なのに、ここでもチャイナさんはお友達とは…!