「映像も面白くない、豪華俳優陣も生かし切れていない。だがなぜこんなに楽しいのか。」ドクター・ストレンジ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
映像も面白くない、豪華俳優陣も生かし切れていない。だがなぜこんなに楽しいのか。
マーヴェルの最新作。
正直、ヒーローものは「シビル・ウォー」「デッドプール」でげっぷが出るほど、ヒーローものなど、もうどうでもよいのだが、なにしろカンバーバッチである。
「沈黙 SILENCE」と迷ったが、家内の一声で、カンバーバッチである。
カンバーバッチとマーヴェルである。
今ではハリウッドいちの稼ぎ役者かもしれないが、落ちぶれたときのロバート・ダウニー・Jrの「アイアンマン」とは訳が違う。
それだけではない。
カンバーバッチとティルダ・スウィントンである。
カンバーバッチとレイチェル・マクアダムスである。
カンバーバッチとキウェテル・イジョフォーである。
カンバーバッチとマッツ・ミケルセンである。
「キャプテン・アメリカ シビル・ウォー」のダウニー.Jr、クリス・エヴァンス、スカ姉、チードル以上の豪華さであるし、いずれもカンバーバッチとの絡みが想像すると楽しくなる。
そして皆、アメリカ人ではない。みな異色、異色、とは言っているが、設定ではなく、このキャストでのマーヴェル、という意味では確かに異色だ。
だが、監督がスコット・デリクソンである。監督選びでは優秀なディズニー、マーヴェルのはずだが、「世界が静止する日」「NY心霊捜査官」の彼である。
果たしてどうか。
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ドクター・ストレンジ
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結論から言うと、、つまらないけど、面白い。という、なんともあまのじゃくな映画評ならではの感想になる。
欠点はある。大いにある。
1)ヒーロー誕生譚でこれほど退屈な語り口もそうそうない。
「スーパーマン」なり「バットマン」なり、第1作目は、彼が果たしてどのようにヒーローとなったのか、を描くために、ドラマが発生するものなのだが、本作にはそれがあまりにも魅力的でない。
わき見運転による交通事故でヒーロー誕生?
うーむ、やはり盛り上がらない。
2)ストーリーに魅力なし。展開も早すぎ。
ストレンジが魔術師になるまでの過程がまあ、これまでのヒーローものに比べて圧倒的につまらないため、ただでさえ、詰め込み気味の展開もその場その場の盛り上がり優先ゆえ、気分が乗っていかないのである。
3)豪華な俳優陣を活かせていない。
ティルダ・スウィントンの坊主なメンターは似合うが既に既視感のあるモノだし、レイチェル・マクアダムスもここ最近の活躍ぶりをみると、あまりに悲しいヒロイン役。。「それでも夜は明ける」「オデッセイ」であんなに魅力的だったキウェテル・イジョフォーもずいぶんショボイ。そしてマッツ・ミケルセンにいたっては、あんなに魅力的な目元を台無しにする余計なメイク。
そして
4)話題の映像がさっぱり面白くない。
「インセプション」を引き合いにするもの果たしてどうかと思うが、魔術が新しいだの、ポッタ好きなら、とかはどうでもよくて、単に
「なぜその絵なのか?」
ビルが曲がるCG絵はすごいかもしれないが、「なぜそうするのか?」が描かれていないため、それ以上楽しくはないのである。不思議な映像体験だが、物語上必然性のある画ではないので、途中で飽きるのである。
要するに、演出に問題あり。スコット・デリクソンの起用はマーヴェルらしくなく、失敗に終わっている。
しかし
だがしかし、カンバーバッチ。
「シャーロック」「イミテーション・ゲーム」の主人公のような、高慢で皮肉屋、だがどこか熱い。だが変人。
はっきり言って本作の序盤のキャラクター紹介は不要だ。
「ああ、はいはい、カンバーバッチだから。」
で、とりあえずいいのである。原作から離れてでも、彼が魔術師になる展開を変えたほうがよかったかと。
カンバーバッチの存在感だけでこの映画は成立するのである。