「嫌な予感はしてたよ…」ジャングル・ブック alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
嫌な予感はしてたよ…
地上波で見たんですが、序盤で下部に「『アイアンマン』シリーズのジョン・ファブロー監督が~~」とテロップが流れてきた時点で、ちょっとアレー?な感じはしてました。
いや、同監督の『アベンジャーズ』シリーズ(総指揮だっけ?)は大好きなので、どっちに転ぶかなとは薄ら思いました…が、途中まで見て「コレ…『ライオン・キング』の焼き増しじゃね?」と感じ始めた辺りでもう、最後まで絶対つまんないやつコレ!!と予測できてしまい、半分くらいで既に自分のテンションがトーンダウン。
元ネタは小説なので、ストーリーが被るのは監督のせいではないんですが(『ライオン・キング』なんか『ジャングル大帝レオ』のパクりって言われてるし…)、でもせめて「完全に被ってる!!」と思わせない工夫をしなきゃダメだよなぁと。しかも後で『ライオン・キング』の実写化もしたと思ったらまたこの監督だし。
ディズニー、ファブロー監督に頼りすぎじゃね?
ディズニー、実写化すると全部ビミョーな仕上がりになってね?
…まぁ、それは置いといて。
まず、主人公の男の子がナヨナヨ過ぎて「ジャングル到着1時間で死ぬだろ!」というような弱々しい体つき。
見てる時は8、9歳くらいかと思っていたので、確かにあのくらいの年頃ってあんな感じの子も多いけどね~と思ってたら、主演の子12歳らしい。いやいや、12歳なら尚更もっとしっかりした体躯の子いたでしょ…
ジャングルで黒ヒョウに確保され、オオカミの群れに入れられ、オオカミの子供と一緒にオオカミママに育てられてるんですよ。で、オオカミの掟みたいなのも覚えて、遠吠えで仲間と連携を取れて、大木の枝をひょいひょい飛び移ってるんですよ。つまり、恐らく確保されて1,2週間じゃなく、結構経ってるはずなんですよ。
なのに足は遅そうだし、木登りも腕が貧相だからモタモタ。足の速さに関しては、オオカミよりはちょっと遅いという設定なんだけど、それでも普通の人間の子よりはかなり速いはず。撮り方でスピード感を出してはいるが、如何せん体の動き自体にキレがない。素早く動いてる感じが全然ない。ていうか足捌きが既に遅いから、いくらスピード感出しても「あ、遅いわ」とわかってしまう。監督もそれを感じたのか、足元をあまり映さないように努めていたようだけど…見た目を汚して野生児っぽくしてるだけで、危機に陥っても目付きも穏やか。「普通のそこら辺で遊んでる子」感が凄く、世界観に入り込めませんでした。
日本で言ったら、近所に公園があって普段から木登りしてる都会っ子の方が、まだ野生児感出せる気がします。都会の学校でもたまに現行で猿か!?ってくらい身体能力凄い子いますが(笑)、そういう子いなかったんかな…
オーディションで2000人の中から選ばれたとのことですが、とてもそうは見えません。別にマッチョじゃないととは思いませんが、「ジャングルで逞しく育ってます」というにはあまりにも貧弱。更に吹替の声がナヨナヨ感をアップ。そこらでグズってる3歳児の方がよっぽどパワフル…こりゃアカン。
何度か木登りするシーンがありますが、最終決戦ですらヘロヘロすぎて全くもって緊張感がないのが致命的でした。
最終的な敵はトラなんですが、これも呆気ない。そんな強敵か?コイツ…
何なら『ライフ・オブ・パイ』のトラの方が遥かに強そうというか、野性味があった。子供(年齢が全然違うけど)も然り。パイの方は撮影中、わざと周囲に主演と関わらせないようにし、孤独を深めたらしいけど、ディズニーは流石にそんなことできないでしょうね。つーかファブロー監督の顔見てると、あんな小さい子にそんな非道なことできなそう(^^;
ディズニー作品でいうと『リトル・マーメイド』のタコみたいなヴィランはどちらかというとトラより他にいて、トラ何だったん?ってくらい印象薄い。
何かエラそうなこと言って調子こいてたけど、主人公にナイフ持たせたら脳天一発で勝てるんじゃないかってくらい、強そうな感じが伝わってこなかった。
大体、作品中大した時間も経ってないので、『ライオン・キング』みたいな成長物語でもなく、「あの弱っちかった主人公が、こんなに強くなって帰ってきて、今度は自分が仲間を守るんだ!!」みたいな感動もない。
どちらかというとウダウダしてた仲間の方が立派な成長を遂げるというまさかの展開。
上に書いた『ライオン・キング』が日本の漫画『ジャングル大帝レオ』のパクりって話、もちろんディズニー側は無言を貫いてるんですが、個人的にちょっと納得してしまった理由のひとつに日本の漫画とアメコミの「主人公像の違い」があります。
日本の主人公像は「最初は弱くて、大切な人を失って悔しい思いをしたり、落ちこぼれ扱いで仲間として認められなかったりして孤独を味わった後、弱い人の気持ちを理解した上で強くなり、仲間を作り(仲間と和解しリーダーとして認められ)、仲間とそれぞれの能力を合わせて戦って、自分よりずっと強い敵に勝つ」っていうのが王道だと思うんです。だから読み手が自分を主人公に投影できて、一緒にハラハラしたり、一緒に冒険した気分になれ、一緒に成長していける。
が、アメリカの主人公は最初から強い。笑
仲間なんか必要ねーじゃん?ってくらい最初から強く、弱者の気持ちなんかわかりませんけどー?状態のはずなのに、何故か使命感が~~とか世界の滅亡が~~とか言い出して、顔も知らん弱っちい奴らを何となーく護ってくれる。で、強敵が現れても一人で戦うし、何なら助けてやった有象無象から逆ギレや裏切り食らったりするし、何かもうワケわからん(^^;
これ↑多分アベンジャーズか何かのレビューでも書いたんですが、結局のところ日本の主人公の方が行動の理由が身近で分かりやすいのが多いんですよね。
なので、アメコミでも個々では敵わない最強の敵に、個々の能力を発揮して仲間と助け合って勝つ『アベンジャーズ』シリーズは日本でもそこそこ人気が出たのかなと思います。
中でもキャプテンアメリカ(元々病弱で体格にも恵まれなかったのが研究者の目に留まり強くしてもらうが、世話になった研究者や仲間を亡くし『ウインターソルジャー』以降仲間のために戦う)が日本で人気の理由も、アイアンマンやスーパーマンがアメコミ的格好良さで人気を博したのとは別の理由なのではないかと個人的には思ってます。
レビューやネットコメントを見ていると、キャプテンアメリカには元祖アメコミヒーローとは違った、特別な思い入れがある人が多い気がします(アメコミ知らん人には長々語ってしまって申し訳ない)。
で、『ライオン・キング』は仲間との協力プレーはないものの、日本の主人公の王道にかなり近いのでパクり疑惑にもちょっと納得してしまったわけなんですが、その『ライオン・キング』と似ていると言っても本作『ジャングル・ブック』は主人公が成長しません。ほんの何日か?1か月くらい?しか経たないので、成長というより「元々持っていた能力を自由に使うようになったので、前よりマシになった」って感じで…どちらかというと主人公の在り方としてはそれこそ『アイアンマン』に近いのかも。
ただ主人公が子供特有のやらかしをするのと、群れを離れて別の場所で仲間を得てのんびり過ごすというのは『ライオン・キング』と同じなので、ストーリーベースがかなり似ているように感じてしまう。
全然関係ないけどアメリカの映画って、大抵やらかすのはヒロインか子供で、反抗期の子供とか小さい子の無知からくるやらかしとか、何か女子供なら何やらかしても許されるというか、やらかしたウゼー女子供をそれでも護ってやるカッコイイ主人公の男ドヤ!みたいなのが多いなーと感じるんですが気のせい?
視聴者の立場からすると普通に腹立つし、明らかなやらかしは老若男女誰でもウゼーなとしか思わんが、製作者陣や株主にはやっぱトロフィーゲットするイケメンのストーリーが人気なのかねぇ。
ディズニーに最近までついてた大型株主も、「女のヒーローなんか売れるわけねーだろw」とか口出して『キャプテン・マーベル』製作前までゴタついたらしいし、ヒーローが女にできないならヒーローを男にしてサブに女か子供をあてがってギャーギャー言わせて問題起こすんじゃなきゃ話が進まないもんな。
要は日本人の好きなムネアツ展開がないうえ、子供がやらかしたうえ特別成長するわけでもないという、何故かクソつまんねー最強ダブルコンボを揃えてしまった本作なんです…残念。
しかもこの監督、ストーリーに緩急をつけるのが苦手なのか、全体が綺麗に整いすぎていて、「ここが見所!」というところがいまいちわかりにくいんですよね。
これはアイアンマンの時にも感じたのですが、特に思い入れもない誰かから聞いた話をサラッとなぞってるだけみたいな印象で、ある意味「全てのシーンを丁寧に作っている」ともいえますが、逆に言えば起承転結や見せ場がボンヤリしていて迫力がない。
自分の見せたいところばかり力を入れすぎる作品の方が世の中には多いと思うんですが、この監督は何故か全体をモヤ~ッと作る…笑
もっとおっとりした感じの、迫力とか戦いとかいう言葉とは無縁の映画撮らせたらうまいのか…?
地上波にも関わらず終わった後に『トイ・ストーリー』のオマケもついてて珍しいなと思ったんですが、レビュー書く前に確認してびっくり。106分しかないのかこの映画。…と思うくらいには長く感じました。地上波だからCMも入るし、だらけにくいはずなんだけどなぁ。多分、映画館で観てたら途中で飽きてた気がします。
本作の売りである「主演の少年以外全てCG」というのはチャレンジだね~とは思うのですが、普段からディズニームービー見てる人からしたら騒ぐほどのクオリティか?という感じだと思います。自分はディズニー狙って見てるわけでもなく、特に実写化モノはほとんど見てない気がしますが、CMで見るだけでも映像技術は他とは一線を画してるのはわかります。
CGに詳しい人なら凄さがわかるのかもしれないけど、正直ディズニーっていつもこんなクオリティだったろ?みたいなナメた感想しか浮かびませんでした。ごめんディズニー、前から凄いってことだよ…
それから全てCGといっても、主人公が溺れてたとこの水(や泡)とか、一部は本物では…?
明らかに一瞬前のシーンと水の質感違いますけど!?と思うところがチラホラありました。本当にほんのちょっとのシーンなので、ほぼ全てCGなのは事実でしょうし、その程度で「全部じゃないじゃん」とかめんどくせー難癖をつける気はないけど(笑)、突然水の質感が変わって「アレ?」「本物の水ってこういうのだよね」と我に返ってしまうというか、見てる最中に「どんなに綺麗でも作り物だよね」みたいな悟りを開いてしまうというか、何か…そこも含めてほんとにのめり込めませんでした。
とかいって質感変えたCGだったら申し訳ない!!!!
動物の動きも個人的には『ライフ・オブ・パイ』の方が上だった気がします、というかディズニーより高クオリティのCG出してきたのってあれが最初で最後では?というくらいあっちのクオリティが高すぎたんですが、観賞から時間が経って美化されている(?)とはいえ本作は『ライフ・オブ・パイ』には迫力も美しさもやや及ばなかったという感じがします。
動物の毛の質感なんかも、最近でいうと『名探偵ピカチュウ』がね…フッサフサだったからね…
『ライフ・オブ・パイ』を見たことがない人や、実写版『ライオン・キング』をまだ見てない人には(同じく全CGで話のベース似てるしライオン・キングの方が後だからクオリティ上がってるかもしれないので)良いかもしれませんが、そうでなくとも総じてオススメするポイントがなく…オオカミの子が可愛かったくらいかなぁ。
子供に優しいディズニーと起伏のない作品作りをする監督のタッグで、半端な作品を作ってしまった印象でした。残念。
残念残念言いながら字数制限ギリギリまでレビューを書く自分に笑ってしまう。
いつも長々申し訳ない。