「恋愛文化の構造をシュールに壊す試み。」ロブスター だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛文化の構造をシュールに壊す試み。
キャストが好みで、設定が面白くって興味があったけれども、シュールすぎてついていけへん系だったらどうしようと思っていました。しかも公開館すくなかったんで、見逃していました。
そんな折、行きつけの映画館でなんと会員限定で無料上映してくれるってことで、それなら、と思い、観てきました。2017年3月のことです。
結果、これ結構あたし好き、って感じでした。
あらすじを引用しますと以下の感じです。
独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれるという近未来。独り身のデビッドもホテルへと送られるが、そこで狂気の日常を目の当たりにし、ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。デビッドはそこで恋に落ちるが、それは独り者たちのルールに違反する行為だった。
(引用終わり)
もうちょいあらすじ補足しますと、独身者のホテルにずっといる方法もあるんです。
それは、ゲリラ化している独身者を麻酔銃で狩った人数が、
残日数に加算されるため、ずっと狩り続ければパートナー選び中として、ホテルにいられます。
また、一応、なる動物が選べるみたいです。タイトルのロブスターはデビッドがなりたい動物です。
デビッドが連れている犬は彼の兄です。デビッドは結婚していましたが、ほかの相手を見つけた妻に捨てられ独身者ホテルに入れられるんですね。
まあ、私がこの世界にいたらば、確実にホテルにほりこまれます。そして、足の悪い男のように自分を偽ってカップルになるか、デビッドのようにゲリラ化するかを選ぶしかなくなり、逡巡の結果デビッドの道を選ぶ気がします。あるいは、あきらめて猫にでもなるかな。
ホテルのルールはひどくって、自慰禁止だけど、セックスは出来なくちゃいけないからメイドにおしりを擦り付けられ勃起力を日々確認される(描かれなかったけど女性はどうやって確認されてたのだろうか…)。自慰をしたら食堂で、トースターで手を焼かれる。狩りが苦手で日数を延ばせない足の悪い男は、自分を偽りカップルになる。デビッドもそうしようとして、冷徹な女に近づくが、冷徹な女に兄である犬を殺されて、ホテルを抜け出すんです。
そうして森の独身者に仲間入りするんだけど、独身者レジスタンスもいろいろルールがあって、恋愛禁止。
確かセックスもダメだったような。欲望は己で処理せよ、ということにやたらと厳格なわけです。
そんな中、近視の女であるレイチェルワイズと惹かれあってしまうんですね。
レジスタンスの活動費用はリーダーであるレアセドゥの両親から盗んでんのかもらってんのかしらんが、得ているようで、
レアたちはカップルを演じて表社会の両親に会いにいくんです。
で、デビッドと近視の女は夫婦設定なので、演技しつついちゃつきすぎてしまうんですが、その辺が面白くって。
あと、パートナー探しホテルにテロを仕掛けるんですが、
そのテロが、パートナー同士のきずなが所詮欺瞞だらけだって
ことを暴露して関係を壊しにかかるという、悪趣味かつ、胸のすくような痛快さがあり面白かったです。
近視の女との関係が、レアセドゥにばれて、近視の女は罰として失明されられます。その報復にデビッドはレアを犬のえさにします。そして、町へ逃げた二人はダイナーにいて、
デビッドは自分も失明しようとしますが、できる?できない?というところで終わります。
多分デビッドはできません。
そしてロブスターになるのかなと思いました。
なんで自分も失明しようとしたのかは忘れましたが(だめじゃん)、結局そんなに愛してないんですよ。禁止されてることがちょっとしたくなった、はしかのような恋をした程度なんかなと。あるいは、性欲に突き動かされたとかそんな程度。
我々が愛だなんだともてはやしているものは、所詮この程度のもん。そんな風におもえ、痛快痛快と思った次第です。
レアセドゥがメイドのかわいこちゃんとレズカップルっぽかったし、みんな勝手で無意味にストイックで、面白いなって思いました。
映画冒頭で、多分ホテルにいた冷酷な女が、牛を撃ったのは、
あれはなんなんでしょうね。元夫?