「救う側も救われる側も命懸け」ザ・ブリザード りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
救う側も救われる側も命懸け
1970年代には、災害に直面したひとびとのサバイバル映画が数多く登場しましたが、救う側と救われる側を同じぐらいの比重で描いたのは『タワーリング・インフェルノ』ぐらいしか思いつかない。
1952年アメリカ。
未明から強烈猛烈な嵐が吹き荒れ、海上にいる2艘のタンカーが真っ二つに折れてしまうという事態が発生した。
一方のタンカーからは救難信号が出ており、周辺の救助艇はそちらに向かう。
残る一方のペンドルトン号は、機関室のある後方側が運よく助かり、沈没を免れた。
乗務員は40名ほど。
一等機関士シーバート(ケイシー・アフレック)の指揮のもと懸命に沈没を回避しようとする。
近隣の沿岸警備隊のうち、彼らの救出に向かったのは、バーニー(クリス・パイン)率いる4名の小型艇だけだった。
バーニーは1年前に同じような海難救助の際、運悪く、乗務員たちを救出できない過去があった・・・というハナシ。
実話に基づく映画化だそうだ。
それにしても、大型タンカー2艘が時同じくして真っ二つとは、なんとも異常なことだ。
それぐらい、嵐が凄まじい。
映画前半は、被災したペンドルトン号の必至の活動が中心。
これまで、どことなく陰があったり訳ありな役た多かったケイシー・アフレックが、責任感の強い機関士を演じており、新たな面を披露した。
操作不能になった舵を人力で操ろうとするあたり、実話といえ、恐れ入る。
後半は、若干4名の小型艇で救助に向かうシーバートの活躍が中心。
過去の失敗を画で見せない演出が、ここでは功を奏す。
彼がどれだけ悔やんでいたか、その深さを描かないことで、より深く感じることができる。
また、シーバートの婚約者ミリアムの存在も見逃せない。
彼女の過去もまた語られることはないのだけれど、海の恐ろしさを十分知り尽くしており、婚約者を守りたい、無茶をさせたくないという思いも充分伝わってくる。
クライマックス、定員わずかな小型艇で40名近い乗務員を助けられるのか、というあたりは意外とあっさり描かれているが、かなりの幸運に恵まれたことは台詞の端々から感じられる。
エンドクレジットで、実際のひとびとの写真が出演者と並んで写し出されるが、みなよく似ている。
実際のシーバート氏も、クリス・パイン同様に眉毛が太いあたりは、ちょっと苦笑いさせられたが。
『タワーリング・インフェルノ』『ポセイドン・アドベンチャー』と比べると、キャストはやや弱いが、内容的には遜色がないかもしれない。