「満足したような気分になるが物足りなさが残る映画」海賊とよばれた男 てんりゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
満足したような気分になるが物足りなさが残る映画
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◯よかったところ
岡田くんの演技力がただただすごい。
百田尚樹自身の思想は好きになれないが、作品には拒絶反応は出ず、一人の起業家の壮絶な人生の物語として観られた。「日本人の誇り思い出そうぜ」系の話だが、押し付けられたかんじはしない。仕事にすべてをかけるあの情熱や貪欲さはたしかに今の若い世代の大半は持っていないと思う。仕事をするってああいうことだよな、と気づかせてくれた気がする。
◯いまいちなところ
物語が早送りのように淡々と進む。すべてのエピソードが薄いと感じた。どこで見せ場が来るのかな、とずっと思っていた。
それぞれの登場人物の掘り下げも浅くて、あまり感情移入できない。妻との最後のエピソードはとってつけたよう。
第二次世界大戦の被害も、社員が一人亡くなっただけでほとんどなかったように描かれている。南方に派遣された社員たちにはもっと被害があったのではないのか。どんな苦しいなかを生き延びたのかは触れられていない。戦時中だという現実味もなかった。
石統やメジャーとのたたかい、もしくは戦時中、戦後の苦労などどこかに焦点をしぼって、登場人物それぞれが策略をめぐらせ駆け引きをする様子など、もっと細かい描写をしてほしかった。
企業として戦争をどう生き延びたのか知りたかった。
あと劇中歌といい最後の終わり方といい、「レ・ミゼラブル意識してるのか?」と思ってちょっと冷めた。
鑑賞直後はなんとなくすごいものを見た気持ちになるが、あとになって考えるほど物足りなさが残る映画だった。
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