マジカル・ガールのレビュー・感想・評価
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魔法にかかった人、鑑賞注意。かつて魔法をかけていた人も鑑賞注意。
めちゃめちゃ全力でネタバレ、いくよ。
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ある男はかつて少女の魔法にかかった。
一方もう一人の男は少女への無償の愛ゆえ、すでに魔法にかかっているのだが、少女が余命幾ばくもないことを知り、暴走を始める。
男を魔法にかけた少女は、魔法にかからない「術師=精神医」に従われ、力を失いつつある魔女(こじれたオンナ)となっていたが、別の魔法少女の使者からの攻撃を受ける。
かつての少女に魔法をかかられた男は、彼女からの助けの声に応じ、反撃に出て、敵側の魔女に対峙したが、その魔力に囚われそうになり・・・
ネタバレ厳禁の本作だが、それを知ってたほうが楽しめるし、そういう風に見ると、各エピソードが興味深く浮き上がる。
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つまるところ、アリシアはバルバラのかつての姿。バルバラはアリシアののちの姿。
ダミアンに【魔法をかけようとする】アリシア。ドレスにステッキ、そしてそのまなざし。フル装備である。
かつての少女に魔法にかかってしまっているダミアンは果たして。
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要するに、
魔法少女誕生と、かつて魔法少女だった女の、その行く末、そしてそれにかかわった哀れな従者のお話。
と書けば、それっぽいのが好きな人は、面白そう、と思うかもしれないが、残念ながら「そんな絵」はない。
面白いのは間違いないが、かつて魔法にかかった大きなお友達は鑑賞要注意。この映画を観て気が重い、と言っている人はアリシアのことではなくて、「自分」を観たからだろう。
追記
こじれた魔女の、すさんだ金策が怖く面白い。魔法少女のなれのはて、自称魔法少女も鑑賞要注意、ではある。
結果的に「魔法グッズ」のために奔走しているし、金策への飛び込み方が逆にリアル。
追記2
ドレスよりも魔法のステッキのほうが3倍も値が張るのは、その象徴だからだろうか。
追記3
ラストの携帯電話のくだりは、要らないような気もする。あれは男が魔法にかかった瞬間なのだから。
登場人物のクセが強く、役者同士の空気感が独特で不思議な空間
可愛いタイトルからは想像出来ないほど、誰も救われない暗い映画。俺はバッドエンドと聞いてたからダメージ少なめで済んだ。知らずに観てたらヤバかったかも。
ずっと地味で派手さは全くない。登場人物のクセが強く、役者同士の空気感が独特で不思議な空間だった。
特にバルバラの話が噛み合わなくて人とズレてる感じがリアル。トカゲの部屋で何が起こったのか気になる...。
ダミアンが刑務所に入った理由や、最後ダミアンが父と娘を殺した意図など、分からない点がいっぱい。
ダミアンとバルバラの関係も分かりそうで分からない。バルバラにとって唯一の理解者がダミアンだったってことかな?
ストーリーは単純だが難しい映画でテーマとか掴めなかったから、ただただ後味悪い印象が残ってしまった。
奇跡も、魔法も、ないんだよ
もっと日本アニメにオマージュたっぷりの話かと思ったが、開幕シーンで長山洋子の楽曲が使用されたりしているものの、あくまできっかけに過ぎず。
ドミノ的にどんどんどんどん悪い方向へ。不条理で予測不能、ブラックユーモアを絡めた作風や展開は独創的。
日本のアニメ『魔法少女ユキコ』の大ファンの12歳の少女、アリシア。
白血病で、余命が少ない事も感づいている。
願い事が。有名デザイナーが手掛けた『魔法少女ユキコ』のコスプレをしたい。
父ルイスはそれを知り、娘の願いを叶えてやりたいが、コスチュームは一点もので非常に高価。尚且つルイスは今無職。本を売るなどしても到底足りない。
アリシアの一番の願い。父親とただ一緒にいるだけでいい。ラジオにその思いを投稿するも、金策に走るルイスは知る由も無く…。
宝石店のショーウィンドウを壊そうとした時、上から突然のゲロゲロゲロ…。
その建物の上の部屋に住む女性バルバラ。
詫びを込めてルイスを部屋へ。着替えや洗濯。
何処か精神不安定なバルバラ。精神科医の夫との生活に疲れ果てていた。
孤独や事情を抱える二人。合意の上で関係を。
ルイスはこれを脅迫のネタに、金をゆする。
支払わざるを得ないバルバラ。
一度だけではなく、二度も。金に困ったバルバラは旧友のツテで危険な仕事を…。
バルバラは身心共にダメージを負ってしまう…。
刑務所帰りの元教師ダミアン。
ある時、倒れていたバルバラを助ける。
バルバラはダミアンの教え子で、ダミアンはバルバラに想いを…。
事情を聞く。
ダミアンは偶然を装ってルイスに接近。問い詰める。
バルバラから強/姦されたと聞かされていたが、合意の上という事が分かるも、尚更ショックを受け、ルイスを殺害。
ルイスの家へ。コスプレしたアリシアと鉢合わせ。
無言で凝視するアリシアに堪えきれず、アリシアも殺害。
バルバラを苦しめる存在は居なくなったが…、
バルバラやダミアンにとってはハッピーエンド…? ルイスやアリシアにとってはバッドエンド…?
娘の為とは言え、愚かな行為をしてしまったルイスは許し難い。が、殺されてしまったのは気の毒な気も…。
自分の知らぬ所で、周りが不幸に。娘の本心を父親が気付いてさえいれば…。悲劇の中心に居て、巻き添えを食らったかのように殺されてしまったアリシアは余りにも酷い。
脅迫されたのは事実だが、彼女もまた周囲の男たちを惑わし、決して同情出来ないバルバラ。彼女だって元凶の一つ。
彼女の為に、罪に罪を重ねてしまったダミアンもまた然り。
揃いも揃って愚かで罪深い。
他に道は無かったのか…?
救いの無い。
本作の脚本を執筆中、『魔法少女まどか☆マギカ』にハマっていたというカルロス・ベルムト監督。
この救いの無い物語、何か通じる…。
実はしっかりと、影響やオマージュはあった。
あまり合わんかった
「ブリキ」
あのメモでいまから何が行われるのかが
容易に想像出来てワクワクしたのに見せてくれん🤣
トカゲの部屋に入ることを決意した際の
合言葉「」キターーっ🤣今度こそぉ!!と
思ったのに。
肝心なところを何ひとつ見せないという手法。
わたし、見たいんですってば😤𐤔
愛するもののために罪を犯す男たちに
哀れみを感じる。
すごく・変な・映画
狐につままれたような気持ちになりたい時に。
見終わってどうしたらこんなこと思いつくのかなあ……と、なんとも言えない気持ちになる。
当時ネットで「魔法少女の使役対決」と書いてる人がいて、その瞬間はものすごく膝を打ったけど、だからってこの作品の魔法が消えるわけでもない。
あの「まどマギ」にインスパイアされて、という惹句から想像する印象からは、180
°かけ離れた内容。
エグいのに気品があって、とにかく不思議な印象。だからってとりすました格好つけ映画というわけでもないし…
いちばん苦労するのは、この作品を人におすすめする時。どう言えば伝わるのか皆目わからない…
「ぼくのエリ」のバッドエンド版とでも言えばいいのかなあ。あの映画から楽しい娯楽要素を抜いて、代わりに現実の苦さを100倍濃縮で入れた感じというか…
でも、映画好きでたくさん観ている人ほどきっと楽しめると思います。
あとは五十嵐大介の「魔女」が好きなら楽しめるかも知れません。
2人のマジカル・ガール
余命短い娘の願いを叶えようとする無職の父親、が話の発端です。
娘(アリシア)は父親に些細だが普段なら絶対に怒られるお願いをします。タバコが吸いたい、酒を飲んでみたい…父親が戸惑いながらそれらを与える…その事で彼女は自分の死期が近いことを悟るわけです。そして、さり気なく自分の夢ノートを父に目撃させる…魔法少女のコスチュームで踊りたい、と…。
方や微妙にサディスティックな精神科医の妻たる女(バルバラ)、少し情緒不安定な感じ。旦那の友人の来訪で最悪なセリフを吐いてしまい、睡眠薬を飲まされ昏倒しているうちに旦那は家を出ていってしまいます。そのショックで許容範囲以上の薬を飲もうとしたものの窓の外に嘔吐、それを偶然にも被ったのが先のアリシアの父親、1階の宝石店のウインドウを割って盗みを働こうとした矢先のことでした。
汚物を浴びて戦意消失の彼をバルバラは呼び止め部屋に招き入れ、なんだかんだで2人はなるようになって、所得格差のなせる事態か、男はバルバラとの不貞の事実を恐喝に使います。
旦那に不貞を知らたくないバルバラは金の工面のためにかつての知り合いを訪ねます。どうも高娼クラブの様で…昔のつてで体を使って金を工面し件の男に渡します。その際に全裸の描写があるのですが、全身傷跡だらけ…この高級SMクラブで精神科医の旦那と出会ったのかもしれないと憶測します。
コスチューム代金を手にした父親、さっそく物を取り寄せてアリシアにプレゼントするも、なにか不足物がある様子…魔法のステッキが足らない…お値段コスチュームの約3倍!?…そして父親は恐喝のおかわりです…
こうして物語はますます救われない方向に突入していくのですが、バルバラの関係者としてひとりの老人が登場します。最初は父親かと思われたけど、かつての教師と生徒の関係です。映画の冒頭にまずそのシーンが描かれます。どうやらそのシーンの成り行きでかつての教師はかつての教え子バルバラに暴行を働き、その贖罪に苛まれている様で以降何度かバルバラにコントロールされる形で犯罪を強要されている様な雰囲気です。このあたりがバルバラが本作のマジカル・ガールではないかとの意見を呼んでいます。バルバラの情緒崩壊もこの教師が発端ではないかと思われます。
一方のアリシアにも魔性を感じます。今や無職の父親に到底手の届かないプレゼントを間接的に要求しています。PCでお気に入りのアニメを観ている描写があるので、そのコスチュームの値段くらいは調査済みでしょうし。
このアリシアの最期、彼女は自身の終わりを覚悟したかの様でした。結果的に決死の我儘だったわけです。彼女のマジックは完遂した。
物語は、多くを語らず淡々としかし綿密に何かを匂わせつつ進みます。このあたりがもどかしく思う人もいる様ですね…自分は非常に堪能しました。この作品が監督デビュー作とは恐れ入りました。
二転三転大どんでん返し
フランス映画によくある、これはスペイン映画だけど静かに流れる話。別々の話から1つの話になり、こー来て、そー来て、ラスト、エー!て久しぶりに声出てしまった。色々裏切ってくれますが、好みは分かれるでしょう。
タイトルからは想像もつかない結末。冒頭シーンからまさかのオチ。細かい説明を省いた演出とカットも結構好み。
あの部屋では何が行われてるのか、恐らくは男の夢でしょうね。
久しぶりにカルーアミルク飲みたくなった。
アリシアの踊る曲は、長山洋子のデビュー曲らしいです。
なんとも不思議な群像劇。
「マジカル・ガール」字幕版で鑑賞。
*概要*
日本の魔法少女アニメにあこがれる少女とその家族がたどる、思いがけない運命を描いたスペイン映画。
*主演*
ホセ・サクリスタン
*感想*
ルイス編~『世界』
バルバラ編~『悪魔』
ダミアン編~『肉』
この3パートに進行する映画。
なんとも不思議な映画でした。独特なカット割り。シュールな展開。各パートが終わると、時間が巻き戻るのは良かった。
個人的に面白かった所は、ルイスが娘の為に強盗する直前、頭上からバルバラが吐いた吐瀉物がルイスの服にかかった彼のリアクションの顔が面白かったw 後に、ルイスが真顔でバルバラに「大丈夫か?」と訊くんですが、あまりにも平然としてるので、何かシュールな感じがして面白かったw
間が長くて、とにかくテンポが悪く、何度も眠たくなりましたが、伏線があったし、つまらなくはなかったです。まだ話がよく分かってない所はありましたが、満足している自分がいて、、なんだろう…この不思議な感じwww
今まで観てきた群像劇の中で、一番不思議な作品でしたw 最悪なラストでしたが、、、つまらなくはなかったです。(^^)
処女と魔女
余命僅かな少女アリシアは処女の象徴、バルバラは魔女の象徴に思えました。
処女にしろ魔女にしろ、どちらにしても男性が作りだしたファンタジーです。
たかがファンタジーされどファンタジーなんですが、自分達の作り出したファンタジーに振り回されて自らの身を滅ぼす男達がお気の毒様的なストーリーが、アルモドバルの賞賛を買ったのかもしれませんね。
フィルムも陰陽の落差激しいスペイン映画らしくて、良かったです。
サーラサラ・・・ 日本アニメをフューチャーしてるようでしてない、スペインからの刺客。
長山洋子の昭和歌謡な曲が妙にインパクトを残すファムファタール作品でした。観た後、何だか苦しくなる事間違いなしです。重いよ!!
もう本当にボタンの掛け違いというか、少女の純粋な願いから皆さん不幸へ不幸へ一直線。バルバラの犠牲でアリシアの夢は叶えられたにせよ、あのエンドはヒドイ!!もう、なんで皆そんなに盲目なの!!代替え案いくらでも可能でしょ!?
クロトカゲの部屋は何だったんだろう・・・とか、パズルの1ピースをルイスが見付けた場所って・・・とか考え始めるとゾワゾワして気持ち悪いです。意図的にでしょうけど答えをハッキリ示してくれないんで気持ち悪さだけ残ります。
ってか魔法のステッキ、日本円にして230万ってどんなやねん!!車より高いオモチャってありえへんわ。
かなりの鬱エンドなんで元気がない時に観るのは要注意です。
悪い魔法みたいな女の子の魅力
冒頭でバルバラが数学教師をコケにしたところから始まり、女の子の魅力に抗えない大人たち。
親子の情なのか、もっとセクシャルな情なのかは色々だけど、願いを叶えてあげずにはいられなくなっちゃう。倫理観が壊れるほど可愛くて仕方がない。魔法少女っていうか、魔女。
願いを叶えてくれるのは一般的に魔法少女/魔女の方だけど、この話では、おじさんが体を張って願いを叶えてくれる。全部破滅的な方向に進むけど。
引き込まれるところまではいかないけど、何となく好きな世界観。
マジカルって、魔法のことじゃないよ
他の人が書いているのとか、Webで解説してるの読んでもモヤモヤしてます。
徒然に疑問点を書くと
・冒頭から現在までのダミアンと、バルバラの関係性、なんであそこまでやってあげるようになっちゃう?
・ルイスはバルバラとやるときあの身体の傷みたら普通引いちゃって思い止まるだろうに。
・バルバラの旦那の関係性もあれだけじゃぶん投げすぎ。
・あんなに挿入なしにこだわったのにルイスごときに抱かれたのか?スゴイ覚悟で金を作りに行くほどなのに。
・なんで2+2=4? 1+1=2じゃないの?
・恐竜って何?
・ダミアンが出所したのなんで分かった?
・なんで、バルバラの家の下にパズルが落ちてた?家の中じゃなく。
・別にアリシアは魔法少女じゃないし、当然アリシアとバルバラは全くの別人だし。強いて言えばバルバラは魔法少女ではなく手品少女。映画の中で魔法を使ってるシーンなんてどこにもないのに何故皆彼女こそが魔法少女とか、2人はそこで繋がるとか思っちゃうのか?そこ魔法だと思うヤツは監督の術中なんですな。
面白い映画だし、客が勝手に自分が納得できるよう解釈させるテクニック、まあ、観客に都合のいいように受け取らせて神化を狙ってるという事ですかね。
やはりこれはまどマギじゃなくエヴァなんですな。そもそも監督が好きなのはセーラームーンであって、まどマギじゃないと思うな。あくまで個人の感想。
とはいえ嫌いじゃないですよ。
不思議な世界にハマる
ものがたりの設定とチラシの不気味さが噛み合わなさそうな映画だなぁと思いつつ鑑賞。
ストーリーが複数あるように思えましたが、最後にはピースのひとつを残して、きっちりハマりました。
音楽、室内の撮り方、図書館のカット、良かった。
スペインは明るいが影も濃い。
アニメ『魔法少女ユキコ』に憧れる白血病に冒された少女と失業中の父。...
アニメ『魔法少女ユキコ』に憧れる白血病に冒された少女と失業中の父。父は娘の為に魔法少女の衣装をネットオークションで手に入れようと奔走するが、自身の蔵書売却では足りずやむなく一線を越えた行為に手をつけてしまった結果事態は全く予期せぬ方向へ・・・というスペイン映画。
等身大マジンガーZの彫像もあるという彼の国では何気に日本が誇るアニメ・特撮文化へのリスペクトがハンパないわけですが、日本国民殆どの記憶に残っていないであろう長山洋子のデビュー曲が流れた瞬間に「この映画、どうかしている・・・」といやな予感が漂い始め、何かいかがわしいものを観ている居心地の悪さの果てに訪れる、このタイトルからは全く想像のつかないクライマックスで開いた口が塞がらなくなりました。爽快感のかけらもないイヤな後味が残る作品ですが、このしてやられた感はなかなか味わえるものではないと思います。ラテンが醸す闇の深さに戦慄させられること必至です。
わっかんない、でした。
この映画のコラムとかで出てきてたワードがフィルムノワールでした。
なのでフィルムノワールってゆう概念を理解できていれば、もっとこの映画の企みを愛でられたのかもですが、ワタシワカラナイなので、あまりはまれませんでした。
2+2はどうやっても4だから、ということが冒頭にあげられ、そして、手にしていたものが消えるという「手品」が冒頭とラストにリフレインされるこの物語。
省略が多く、わからないままの事、描かれなかった事が沢山で、見てる間に、え?これってどゆこと?と深読みしていたら、次のわからない事が出てきて、、という悪循環に陥りました。
バルバラはなんであんなに病んでるのか?なぜルイスごときのユスリを突っぱねられなかったのか?
元教師はバルバラに何をしたのか?
などなどなど。
アリシアはかわいそすぎますけどね。
そら死ぬ前に魔法少女ユキコのドレスとステッキを贈りたいルイスの気持ち、わからなくはないけど、
本物買わずに似たようなんオーダーとかしたら良かったんちゃうん?なんて思いました。
ルイス、ラジオ聴いてたら違う魔法にかかってたんちゃうかなぁ。残念な人たちがライクアローリングストーンしてしまったという話でした。というか、そこまでしかわからなかったです。
主題は少女に降りかかる不幸じゃなかった
まどマギのような世界観と聞いていたので、もう少しポップに話が進んでいくのかと思っていたけど、少女の思いとは裏腹に話は大人中心に暗く進んでいく。
まどマギの世界観は少女の願いが悪用されることがもっと全面に出ていたけど、マジカルガールは少女の願いによって不幸の連鎖に巻き込まれる大人達の話に主題が置かれていることが違うと思う。そういう意味でタイトルにミスリードされた思いがあり、期待ほどは評価できなかった。
バルバラとダミアンの間に過去に何があったのかよくわからなかった。学生時代に性的被害に遭ったのか?バルバラはダミアンが紳士ぶったクズだと判っていて、こういう結果になることを予想してダミアンに頼ったのか?暗示的には示していたような気がするけど、はっきりして欲しかったな。
一番のクズは紳士ぶってた数学教師のダミアンだった。対照的に唯一悪いことしてないアリシアが1番可哀想な目に遭うとは。ルイスもバルバラも、罰を受ける理由はあったけど、アリシアは純粋に父親と一緒に居たかっただけ。最後だって父親にコスプレ姿を見せて喜ばせようとしたのに、それが仇になってしまって…。
※ 109シネマズ川崎で2016/04/06に鑑賞。
天知茂版明智小五郎シリーズ
監督自体もあの頃のテレビドラマが好きだと公言してるようで、全体の雰囲気もなんとなく懐かしい感じと、しかしあくまでもスペインの乾いた空気が漂う画風である。始めの主人公である求職中の教師がネット検索する際のポータルサイトが『RANPO』という名称にもそれが表われている。
プロットとすれば、一寸複雑な話の進行で、3人の人間がそれぞれのストーリーを持ち、それが絡まり合う群像劇のような流れで、それぞれが闇を抱えながら、最後は突拍子もないラストへ傾れ込む。
劇中に流れる音楽も中々絶妙に演出を盛り上げる。長山洋子の歌がこんなにも作品に華を添えるとは上手い演出である。それは、教師の娘が不治の病であるにも拘らず、好きなアニメアイドルに憧れ、踊る真似をしながら、突然気を失うシーン、又は父を驚かそうと買って貰ったドレスとステッキを持ってこれから正に踊りの披露をする際に流れるBGM。強い寂寥感と、居たたまれない程の辛苦感を放出させている。スペイン音楽との親和性みたいなものも同時に感じられるかなり作り込まれた秀逸な出来だと感心させられた。
内容的には『ファムファタール』ものなのであるが、そのサイコパスな展開、少女の夢を叶えたいばかりに悪へのめり込む教師、そして精神的に病む精神科医の妻と、その妻の学生時代の恩師の破滅的なストーリー展開。本当に何が次に起こるのか予想もつかない流れであり、まさか娘を撃つまでの猟奇的な展開は驚愕でありさえする。かなり気まずくなるので娘と観に行くような映画では決してないと、評論家町山さんの話に頷くことしきりである。
冒頭シーンの悪口が書かれたノートの切れ端、そしてラストシーンのスマホ。お互いに手品で隠し合うことで、この作品のカタルシスが完結するのであろう。
魔法少女と魔女の戦い
謎が多く、多様な感想が許された映画なのだな、と思う。
「魔法少女」というものが現実にあったら…、ということなのだろうか。
アリシアという魔法少女と、バルバラという、かつて魔法少女だった魔女との戦いのように見える。2人とも、「願い(バルバラの場合は呪い)」を叶えることはできたが、大きな代償を払うことになり、終わる。
アリシアの願いを叶える「力」は、アリシアの父の「愛」。
彼女の願いの無垢さ、純粋さとは裏腹に、現実世界で不相応な願いを願うと、それは歪んだ代償を必要としてしまう。
ドラえもんに、どんな願いも叶える魔法のランプというものがあったが、それを連想する。
しかしのび太と違ってアリシアは父に願いを頼んだわけでも無いので、自業自得感は全く無く、いっそう悲劇的だ。
バルバラの願い(呪い)を叶える力は、ダミアンの愛。アリシアの父とダミアンは共に元教師であることも、対応関係にあることを思わせる。
冒頭で少女の頃のバルバラと、教師だった頃のダミアンがチラリと登場するが、このころ、彼らの間にどんな事件があったかは語られない。
しかし結果的にダミアンは長年刑務所に服役することになった。おそらく、バルバラの願いを叶える代償を払わされたのだろう。
大人であるバルバラの願いはすでに無垢では無い。憎しみ、打算、虚偽が入るものになる。
最後のシーン。ダミアンがバルバラに携帯を渡すところ。ダミアンの心に去来したものは何か。
バルバラがもう無垢な魔法少女ではなく、汚れた魔女になってしまったという絶望感か。それとも、かつてバルバラのために犯罪を犯してまでやったことが、実はバルバラにだまされていたことを悟った瞬間なのか。
魔法少女というモチーフを使って、勧善懲悪の大団円、ハッピーエンドの真逆をやった意味は…?
現実はアニメのように、「良い偶然」が重なって善が勝つ、というよりは、「悪い偶然」が重なって、全員にとっての「最悪」に突き進む、ってことかな。
よかった
難病の娘のために奔走する父親の話かと思ったらそうでもなく、いろいろな人がそれぞれの立場で行動し、その軋轢と世の無常を感じさせる映画だった。
ただ、無常を描くために後付で娘を難病にしているのかと思うと白けるし、表現として心無い感じがする。
なんでお母さんがいないのか気になったし、いくら余命いくばくもない娘のためとはいえ、あんなに高価なコスプレ衣装を買うのはどうかと思う。上手な人や業者にオーダーした方がいい。そこも後付で作り上げた物語のあまりうまくいってなさだと思う。
しかし見終わった後、いろいろな場面が心に残って反芻してしまうので、印象深い映画だったようだ。お父さんが無職で日常を半ズボンで過ごしているところや、出所したおじさんがムショ仲間と親交する場面よかった。
省略による過剰な想像力が作品を膨らませる
最初のシーンには、ほかの生徒は出てこない。にもかかわらず、教室の空気は伝わってくる。そしてこの関係と、語り口が映画の全体を引っ張る。老数学教師ダミアンと人妻の元美少女バルバラ。そして老数学教師は、その知性を彼女を守るためにのみ使う。ムショに入れられて一度は、彼女との再会をためらったものの、その魔力にとりつかれているのだ。ムショに入れられた事件は謎。バルバラが、精神科医の旦那と暮らす生活も謎めいている。バルバラの過去もかなり謎だ。一方、アリシアとルイスの父娘も謎めいている。不思議の国のアリスの物語では、キャロル・ルイスは文学者であり、かつ数学者でもあった。日本オタクらしいスペイン人監督のデビュー作らしいが、このメルヘンチックなハードボイルドさは、カウリスマキ兄弟を彷彿とさせる。文学教師対数学教師。その愛の表現方法が、あまりに単純そしてストレート過ぎて笑いながら惹きつけられてゆく。お金と愛と人生について考えさせられる寓話。映画らしい映画。ラストは「バードマン」を思い出させた。
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