「情報の出し方に惚れる 魔法少女もやはり魔女」マジカル・ガール JIさんの映画レビュー(感想・評価)
情報の出し方に惚れる 魔法少女もやはり魔女
皮肉という言葉が、観た後で真っ先に浮かびました。
誰も願いを叶えられずに傷つく、遣る瀬無い悲劇でした。
少女の妄想。娘を思うルイスの努力。ダミアンの自己を修復する決意。バルバラの魔性。
誰の行動も思い通りにならない。
そもそもこの「マジカル・ガール」という題。日本のマンガの文脈で見るとポップでカワイイ魔法少女ですが、そんなポップなアイコンが悲劇を引き寄せるというのは、なかなかの皮肉です。やはり魔法少女も魔女に変わりない、西洋の文脈に持ち込めば、魔女の悪魔的なイメージが浮かび上がるということでしょうか。
それはそうと、どうしても印象に残るのが、この表現の格好良さ。
垂直水平や、対称性を備えた明快な構図の画面。この明快さは、映るものの意味へと観る者の注意を引きつけますが、その上で、あえてストレートに説明せずに、それとなく重要な事を提示したり、暗示的に見せることで、観客に主体的に情報を拾わせ、推察させる見せ方は素晴らしく巧みだと感じます。人が内に潜めている思考や性格を、表出したわずかな隙に読み取っていく楽しさ。他人を観察して、その人の情報を推察できるという面白さを、発見した気がします。
あるいは、意味の伝え方のアイディアが面白かった、とも言えそうな気がします。
少女が白血病であることはラジオから。ダミアンの、パズルを用いた精神状態の変化。バルバラがトカゲの部屋に入る時の、合言葉の書かれていない紙。
別に難解な訳ではない。直接的な言葉を介さず意味を伝えているのは、なんとも格好よかったです。
しかしまだ理解できていないところもあって、例えばバルバラと鏡の意味、特に鏡を割る意味とかはまだ分かってないかも。 ジグソーパズルの絵の内容もまだよく分かっていない。あの絵はクロード・ロラン?平穏な海への船出を思わせる絵でしょうか?
とかくディテールがとてもよく設えてあるので、全部の意味が気になります。詳しい方の解説が聞きたいです。
こういう表現の凝り具合はなんとなく、映画という表現形態自体が好き、という映画ファンの人に、すごく好かれそうな一作だなという気がします。