「魔法少女と魔女の戦い」マジカル・ガール SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
魔法少女と魔女の戦い
謎が多く、多様な感想が許された映画なのだな、と思う。
「魔法少女」というものが現実にあったら…、ということなのだろうか。
アリシアという魔法少女と、バルバラという、かつて魔法少女だった魔女との戦いのように見える。2人とも、「願い(バルバラの場合は呪い)」を叶えることはできたが、大きな代償を払うことになり、終わる。
アリシアの願いを叶える「力」は、アリシアの父の「愛」。
彼女の願いの無垢さ、純粋さとは裏腹に、現実世界で不相応な願いを願うと、それは歪んだ代償を必要としてしまう。
ドラえもんに、どんな願いも叶える魔法のランプというものがあったが、それを連想する。
しかしのび太と違ってアリシアは父に願いを頼んだわけでも無いので、自業自得感は全く無く、いっそう悲劇的だ。
バルバラの願い(呪い)を叶える力は、ダミアンの愛。アリシアの父とダミアンは共に元教師であることも、対応関係にあることを思わせる。
冒頭で少女の頃のバルバラと、教師だった頃のダミアンがチラリと登場するが、このころ、彼らの間にどんな事件があったかは語られない。
しかし結果的にダミアンは長年刑務所に服役することになった。おそらく、バルバラの願いを叶える代償を払わされたのだろう。
大人であるバルバラの願いはすでに無垢では無い。憎しみ、打算、虚偽が入るものになる。
最後のシーン。ダミアンがバルバラに携帯を渡すところ。ダミアンの心に去来したものは何か。
バルバラがもう無垢な魔法少女ではなく、汚れた魔女になってしまったという絶望感か。それとも、かつてバルバラのために犯罪を犯してまでやったことが、実はバルバラにだまされていたことを悟った瞬間なのか。
魔法少女というモチーフを使って、勧善懲悪の大団円、ハッピーエンドの真逆をやった意味は…?
現実はアニメのように、「良い偶然」が重なって善が勝つ、というよりは、「悪い偶然」が重なって、全員にとっての「最悪」に突き進む、ってことかな。