「欠けた一つのピースから全てが壊れていく」マジカル・ガール ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
欠けた一つのピースから全てが壊れていく
日本版のポスターがダメなのは置いといて、タイトルから類推される印象とはおよそ異質でブラックな描写に圧倒される作品だ。複数形でないことからタイトルが指しているのはバルバラだろうか。もしあそこでアリシアが本当に魔法を使ってダミアンを‥だったらなんだけどさすがにそれはない。
今作は基本的に言葉が足りないのでそこで多くの齟齬が生じる。そしてその過ちの連鎖はどれもが歪んだ愛情によるもので、バルバラにしてもルイスにしてもダミアンにしても求めている相手から愛されているようには見えない。そもそも登場人物全てが無表情で感情の起伏に乏しい上に言葉も少ないので彼らの性質を確かにするのは難しいだろう。それゆえに観る側は惹きつけられるのだが。
各登場人物のエピソードも過去のものについては肝心な部分は一切描写されない。しかし匂わせてはいるのでそうした事柄を拾い上げて考えるのも興味深い。ダミアンが服役した理由、バルバラの遍歴、ルイスの過去や家庭のこと。そして蜥蜴については想像もしたくないな。あの白紙のカード‥
ところであの魔法少女のステッキレプリカは2万ユーロもするのだろうか笑。そして一人の女性を追い込んでまでして手に入れたレプリカをアリシアに渡したときの反応はどうだっただろう?その後のルイスの行動からも最初のドレスを渡したときと同様だったことが伺える。ルイスは娘を理解していないが自分に出来ることが無いことに気付いてもいるのだろう。カフェの女性店主に常識で諭されてもそれが自分たち親娘には通じないことがわかっているのであのようにモノで解決しようとするしかない。悲しいというよりも滑稽だ。アリシアは自分の態度で父親を傷つけたと気付いてからのあのサプライズだったか。長山洋子のデビュー曲が日本人にとっては必要以上にザラつくので忘れられないシーンになった。
ちなみに今作を観ていているときに思い出したのが『害虫』だったりしたのだけどそこからもどんどん離れていってラストはなんと小粋に締める、てそれはどうよと突っ込みたくもなるがまあいいか。
ちなみに詳細はわからないがこのポスターが秀逸だと思う。
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