「太陽は身を焦がす」マジカル・ガール 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
太陽は身を焦がす
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ノワールな映画が好きだ。このところノワールが多くて嬉しい。ファスビンダー、ハイスミス、オーディアール……そして本作。
オーディアール『ディーパン』は性善説を基調としていたが、本作は性善説など糞食らえ、愛のためならトコトン壊れてみせましょう、というド真性ノワールだった。
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観る前は、アニメ大好き美少女が主人公だと思っていた。
むしろ主役は、アニメと関係ないおじいちゃんだった。
蛾は光に吸い寄せられて羽根を焦がす。
おじいちゃんも、炎の美女バルバラに近づきすぎて身を焦がす。
後半あたりから何となく作品の意図が見えてきて、「おじいちゃん逃げてー、バルバラに近づかんといてー」と思ってたんだが、そんな願いも、理性も、常識も、おじいちゃんを引き止める事はできない。
おじいちゃんも、引き返したくてしょうがないんだが、自分でどうすることもできない。
バルバラはおじいちゃんにウソをついていて、おじいちゃんはそのウソが録音された携帯を持っている。
その携帯をどうするか。
バルバラの全てを受け入れ浄化するおじいちゃん、たとえ自分は罪まみれになっても。
そのラストが泣ける。
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これ、あらすじだけ書くとアホみたいな話だと思う。常識や理性で見れば呆れる話と思う。おまけに、アニメとかトカゲとか、くっさい歌(炎の少女)とか、ププっと吹き出してもおかしくない、トリッキーな装飾。
くっさい歌なのに、泣けるという不思議。まさにマジカル。
うまく着地させられないであろう遥か遥か遠くまで映画を放って、それでいて、ぎりぎり着地させた感じ。素晴らし。
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